ビジネス

モラトリアム法利用の中小企業のうち5~6万社が自主再建困難

 企業倒産件数が2013年度は24年ぶりに1万1000件を下回る低水準になっている。およそ四半世紀ぶりの「異常事態」がなぜ起きているのが、大前研一氏が解説する。

 * * *
 企業の倒産件数がバブル期並みの低水準になっている。

 東京商工リサーチの調査によると、2013年度の全国企業倒産件数(負債額1000万円以上)は前年度比10%減の1万536件で1990年度以来23年ぶりに1万1000件を下回り、負債総額も同9.7%減の2兆7749億9200万円で1989年度以来24年ぶりに3兆円を割り込んだという。東証1部・2部の上場企業の倒産も1994年度以来19年ぶりにゼロだった。

 この“異常事態”を招いたのが、2009年12月から2013年3月末まで続いた「中小企業金融円滑化法(モラトリアム法)」と、その期限切れ後も中小企業のリスケ要請に応じている銀行だ。

 これまで私は、モラトリアム法の期限切れ前にもこの問題を取り上げたが、まさかの返済猶予継続によって、本来はとっくに潰れていてもおかしくなかった中小企業が、今も延命しているわけである。つまり「モラトリアム」ではなく、果てしない「モラルハザード」が起きているのだ。

 病人に喩えれば、もはや自力では生きられない末期患者に生命維持装置を付け、最終期限が来ても外さなかった。そのため、すでに寿命は尽きているのに、ずっと病室で生き続けている患者のような中小企業だらけになっているのだ。

 金融庁は、モラトリアム法を利用した中小企業の数は30万~40万社に上り、そのうち自主再建困難な企業は5万~6万社に達すると推計しているという。

 実際、モラトリアム法の適用を受けてきた中小企業を調査したところ、経営状況が改善されていない会社が少なくなかったらしい。このため金融庁は、そういう中小企業に対しては、転廃業を促す方針に転換したと報じられている。

 しかし、経営コンサルタントとして40年以上にわたって企業の盛衰を見てきた私に言わせれば、廃業はともかく、転業は再建や起業よりもはるかに難しい。

 たとえば、小さな町工場がIT企業になったり飲食店を開いたりしてすんなり成功できたら、経営者は誰も苦労しない。おそらく転廃業を選んだ中小企業に新たな融資をしても、それらの会社は再び負債を増やして倒産するのがオチだろう。だから、なぜこんなことをするのか、私には全く理解できない。

※週刊ポスト2014年5月30日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

林家ペーさんと林家パー子さんの自宅で火災が起きていることがわかった
《部屋はエアコンなしで扇風機が5台》「仏壇のろうそくに火をつけようとして燃え広がった」林家ぺー&パー子夫妻が火災が起きた自宅で“質素な暮らし”
NEWSポストセブン
1年ほど前に、会社役員を務める元夫と離婚していたことを明かした
《ロックシンガー・相川七瀬 年上夫との離婚明かす》個人事務所役員の年上夫との別居生活1年「家族でいるために」昨夏に自ら離婚届を提出
NEWSポストセブン
林家ペーさんと林家パー子さんの自宅で火災が起きていることがわかった
「パー子さんがいきなりドアをドンドンと…」“命からがら逃げてきた”林家ペー&パー子夫妻の隣人が明かす“緊迫の火災現場”「パー子さんはペーさんと救急車で運ばれた」
NEWSポストセブン
豊昇龍
5連勝した豊昇龍の横綱土俵入りに異変 三つ揃いの化粧まわしで太刀持ち・平戸海だけ揃っていなかった 「ゲン担ぎの世界だけにその日の結果が心配だった」と関係者
NEWSポストセブン
“高市潰し”を狙っているように思える動きも(時事通信フォト)
《前代未聞の自民党総裁選》公明党や野党も“露骨な介入”「高市早苗総裁では連立は組めない」と“拒否権”をちらつかせる異例の事態に
週刊ポスト
韓国アイドルグループ・aespaのメンバー、WINTERのボディーガードが話題に(時事通信フォト)
《NYファッションショーが騒然》aespa・ウィンターの後ろにピッタリ…ボディーガードと誤解された“ハリウッド俳優風のオトコ”の「正体」
NEWSポストセブン
立場を利用し犯行を行なっていた(本人Xより)
【未成年アイドルにわいせつ行為】〈メンバーがみんなから愛されてて嬉しい〉芸能プロデューサー・鳥丸寛士容疑者の蛮行「“写真撮影”と偽ってホテルに呼び出し」
NEWSポストセブン
佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《佳子さまどアップ動画が話題》「『まぶしい』とか『神々しい』という印象」撮影者が振り返る “お声がけの衝撃”「手を伸ばせば届く距離」
NEWSポストセブン
交際が報じられた赤西仁と広瀬アリス
《赤西仁と広瀬アリスの海外デートを目撃》黒木メイサと5年間暮らした「ハワイ」で過ごす2人の“本気度”
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(公式サイトより※現在は削除済み)
《15歳女子生徒にわいせつ》「普段から仲いいからやっちゃった」「エスカレートした」“やる気スイッチ”塾講師・石田親一容疑者が母親にしていた“トンデモ言い訳”
NEWSポストセブン
秋場所
「こんなことは初めてです…」秋場所の西花道に「溜席の着物美人」が登場! 薄手の着物になった理由は厳しい暑さと本人が明かす「汗が止まりませんでした」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 「高市総理を阻止せよ」イカサマ総裁選の裏ほか
「週刊ポスト」本日発売! 「高市総理を阻止せよ」イカサマ総裁選の裏ほか
NEWSポストセブン