日本は長寿大国だが、最近では一般的な「平均寿命」から、入院したり要介護状態になったりする期間を差し引いた「健康寿命」が注目されている。厚生労働省の研究班によると、2010年時点のデータでこの「健康寿命」が男女ともにもっとも長かったのが、静岡県浜松市。男性は72.98歳、女性75.94歳で男女ともに1位となっている。
このため、各種報道では、「何故浜松市なのか?」という理由探しに躍起だ。静岡名物の緑茶のほか、浜名湖でウナギやアサリが名産品であることから、それらと健康長寿を関連づける報道も見られた。
ウナギには脳の働きを向上させ認知症予防に役立つとされるドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)などの脂肪酸が多く含まれ、目の老化を防ぐビタミンAも豊富だ。アサリなどの貝類にはタウリンが含まれ、疲労回復に役立つとされる。
そうした情報はもちろん「間違いではない」が、誇張して喧伝されることも多いので注意が必要だ。
例えばDHAについては、日本植物油協会がHPで〈『DHAで頭が良くなる』という説がありますが、これは「不足すれば脳の活動は低下するが、補給すれば元に回復する」ことです。すなわち「持って生まれた知能レベルはDHA投与で良くなるのではない」ということ〉と説明するように、科学的に立証された実験結果が曲解されて独り歩きするケースもある。タウリンも同様で低血圧、低血糖の人、抗血小板薬、抗凝血薬、脂質低下薬を服用中の人には危険性が示唆されており、期待した効果が得られるかは個人の体質に依る部分が大きい。
メディアの大げさな報道に踊らされると、かえって健康を損なうことになりかねないのだ。
※週刊ポスト2014年6月27日号