国際情報

日中が全面的に軍事衝突すれば最初に東京中心部が攻撃される

 尖閣諸島周辺海域への野心を隠さない中国。日中が衝突する危険度が高まっている。その可能性は低いと見るべきだが、局地的な紛争から戦線が拡大し、日中が全面衝突するとどうなるか。やはり物量と補給線に勝る中国は容易な敵ではない。

 * * *
 中国人民解放軍は約230万の兵力を擁するとはいえ装備は旧式で士気も低く、精鋭の自衛隊は十分に対応できるという声が根強くあるが、あくまでそれは緒戦でのこと。長期かつ広範な戦闘でも対応できるかというと、軍事専門家は否定的だ。アメリカで海軍戦略アドバイザーを務める北村淳氏が解説する。

「中国が日本の本土を攻撃する場合、まず考えられるのが通常弾頭を搭載した弾道ミサイルと長距離巡航ミサイルの発射です。中国側に人的・物的損害が生じない上にピンポイント攻撃が可能で、日本をパニックに陥れるには十分だと考えられます」

 長距離巡航ミサイルの製造コストは安く、100発単位で連続的に着弾させて日本の防御能力を超える「飽和攻撃」が可能だ。北村氏によれば中国は既に地上目標攻撃用長距離巡航ミサイル(LACM)の「東海10型」「長剣10型」などを600~700基以上、地上目標攻撃用弾道ミサイル「東風21型」などを100基以上配備し、今後も対地攻撃用超音速巡航ミサイル「Kh-32」などを配備していく。

 自衛隊の弾道ミサイル迎撃システム(BMD)は海上自衛隊のイージス艦から発射される迎撃ミサイルSM-3が高高度で対応し、そこで撃墜できなかったものを航空自衛隊の運用するPAC-3が地上近くで迎え撃つ。米国防総省はSM-3の命中精度を80%以上と発表したことがあるが実態はもっと低いとされ、PAC-3に至っては射程が15~20kmと短く、36基(1基は最大16発を搭載)しか配備されていない。飽和攻撃には到底、対応できない。北村氏が続ける。

「巡航ミサイルは戦闘機や護衛艦の対空ミサイルで撃墜できる可能性もある。しかしそのためには早期警戒用航空機を24時間体制で動かさなくてはならない。男鹿半島沖日本海上空、隠岐諸島沖日本海上空、そして五島列島沖東シナ海上空にE-2C早期警戒機を常時警戒飛行させ、本州上空でもデータ中継・管制任務に当たらせる必要がある。航空機の数はギリギリで相当ハードなローテーションになる」

 当然、中国側はその警戒システムの破壊も狙ってくるだろう。そして100発以上の長距離巡航ミサイルは日本人に心理的な打撃を与えるシンボリックな建造物を狙う。北村氏は「首相官邸や放送局、防衛省に加えて原発をはじめとする発電所や石油備蓄基地などのインフラ系が狙われる」と指摘する。全面的な軍事衝突が起きる場合、最初に東京の中心部で火の手が上がると覚悟しなければならない。

※SAPIO2014年7月号

関連キーワード

トピックス

どんな役柄でも見事に演じきることで定評がある芳根京子(2020年、映画『記憶屋』のイベント)
《ヘソ出し白Tで颯爽と》女優・芳根京子、乃木坂46のライブをお忍び鑑賞 ファンを虜にした「ライブ中の一幕」
NEWSポストセブン
相川七瀬と次男の凛生君
《芸能界めざす息子への思い》「努力しないなら応援しない」離婚告白の相川七瀬がジュノンボーイ挑戦の次男に明かした「仕事がなかった」冬の時代
NEWSポストセブン
俳優の松田翔太、妻でモデルの秋元梢(右/時事通信フォト)
《松田龍平、翔太兄弟夫婦がタイでバカンス目撃撮》秋元梢が甥っ子を優しく見守り…ファミリーが交流した「初のフォーショット」
NEWSポストセブン
世界が驚嘆した大番狂わせ(写真/AFLO)
ラグビー日本代表「ブライトンの奇跡」から10年 名将エディー・ジョーンズが語る世界を驚かせた偉業と現状「リーチマイケルたちが取り戻した“日本の誇り”を引き継いでいく」
週刊ポスト
佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《即完売》佳子さま、着用した2750円イヤリングのメーカーが当日の「トータルコーディネート」に感激
NEWSポストセブン
国連大学50周年記念式典に出席された天皇皇后両陛下(2025年9月18日、撮影/JMPA)
《国連大学50周年記念式典》皇后雅子さまが見せられたマスタードイエローの“サステナブルファッション” 沖縄ご訪問や園遊会でお召しの一着をお選びに 
NEWSポストセブン
豪雨被害のため、M-1出場を断念した森智広市長 (左/時事通信フォト、右/読者提供)
《森智広市長 M-1出場断念の舞台裏》「商店街の道の下から水がゴボゴボと…」三重・四日市を襲った記録的豪雨で地下駐車場が水没、高級車ふくむ274台が被害
NEWSポストセブン
「決意のSNS投稿」をした滝川クリステル(時事通信フォト)
滝川クリステル「決意のSNS投稿」に見る“ファーストレディ”への準備 小泉進次郎氏の「誹謗中傷について規制を強化する考え」を後押しする覚悟か
週刊ポスト
アニメではカバオくんなど複数のキャラクターの声を担当する山寺宏一(写真提供/NHK)
【『あんぱん』最終回へ】「声優生活40年のご褒美」山寺宏一が“やなせ先生の恩師役”を演じて感じた、ジャムおじさんとして「新しい顔だよ」と言える喜び
週刊ポスト
林家ペーさんと林家パー子さんの自宅で火災が起きていることがわかった
《部屋はエアコンなしで扇風機が5台》「仏壇のろうそくに火をつけようとして燃え広がった」林家ぺー&パー子夫妻が火災が起きた自宅で“質素な暮らし”
NEWSポストセブン
1年ほど前に、会社役員を務める元夫と離婚していたことを明かした
《ロックシンガー・相川七瀬 年上夫との離婚明かす》個人事務所役員の年上夫との別居生活1年「家族でいるために」昨夏に自ら離婚届を提出
NEWSポストセブン
“高市潰し”を狙っているように思える動きも(時事通信フォト)
《前代未聞の自民党総裁選》公明党や野党も“露骨な介入”「高市早苗総裁では連立は組めない」と“拒否権”をちらつかせる異例の事態に
週刊ポスト