ところが実態は、東京国立博物館の公式サイトやエントランス付近の大看板には、台湾側の抗議の前から「國立」の文字が入っていた。東京国立博物館の担当者によれば、「騒動の原因となったポスターのデザイン、作製は主催メディア側」だというのである。メディアこそが問題を起こした当事者なのだ。
問題の「國立」の文字を削除したポスターを作製したのは誰だったのか。主催各社を取材したところ問題となったデザインの担当は「各社が分担してやっていること」との回答。要は「ポスターは作ったが、『國立』を削除したデザインはどこか一社の責任ではなく、みんなでやったこと。台湾側からの抗議については、博物館同士で勝手にやってくれ」という態度なのだ。
実は、主催各社は自社の報道でも特別展の名称から「國立」の文字を削除していた。中台問題の取材を重ねてきたジャーナリストの井上和彦氏が解説する。
「主催メディア各社は、『國立』という二文字を入れてしまうと台湾を独立国だと認めてしまうことになり、中国から反発を受けるかもしれないと考えたのでしょう。しかし、博物館や特別展の正式名称は固有名詞です。メディアの判断で省略していいはずがない。これでは媚中メディアの誹(そし)りを免れません」
※週刊ポスト2014年7月11日号