ある民間業者に所属して未納者を訪問している女性もこう明かす。
「1日に20~30件くらい、月に800件ほどの未納者を回っています。会社からは1日3件は免除申請書類を取ってくるように指示されています。時給1000円ほどで、ノルマ以上に書類を取ってきても歩合給をもらえるわけではないのですが、逆に1日3件達成できないと厳しく叱責されます。
未納者の方に『払ってください』というと門前払いされるか、払えない理由を延々と聞かされるだけ。会社からも免除を強調するようにいわれています」
だから未納者に払う能力や意思があったとしても「免除」が先走り、その目標ばかりが達成されるのだ。
本当に免除が必要なほど困っている人に制度を知らせることは重要だが、それと同様に「どうすれば払う能力や意思がある人から支払ってもらえるか」を具体的な政策として作り出すことこそが年金官僚の仕事であるはずだ。それすらせずに、彼らは未納者を回るという面倒な仕事を民間業者に丸投げしただけではないのか。
免除期間があれば、その分だけ将来の年金は減額される。仮に本人の収入は低くとも親や親戚などの援助を受けて納付できる可能性があるかもしれないのに、政府はそれを無視して老後の収入の柱を奪っていることにもなる。
※週刊ポスト2014年7月11日号