石川県珠洲市の清水海岸では、能登で400年以上前から続く「揚げ浜式製塩」がいまも継承されている。昭和34年に海水からの直接製塩が廃止されて多くの浜士が廃業したなか、故・角花菊太郎さんが全国でただ一人、「揚げ浜式」を続けたためだ。
そして「子供の頃から家族総出で手伝っていたから、塩づくりのことは全部わかっていた」と語る息子の角花豊さんが技術を受け継いだ。角花家の製塩技術は国の重要無形民俗文化財に指定されている。
写真は、粘土で人工の基盤を築き、砂を敷き詰めた塩田。「塗浜」と呼ばれる能登独自の形態だ。
「揚げ浜式」では、汲んできた海水を塩田に撒いて太陽熱で水分を蒸発させ、塩が付着した砂から塩分濃度の高いかん水をつくり、平釜で煮詰めて結晶を取り出す。太陽と風の力を借りるため、製塩は4月中旬から10月中旬までと短い。
「天気を読んで海水を撒くので、一発勝負。塩の仕上がりを決める釜炊きは、薪で火を調整しながら夜を徹して10時間煮詰める。重労働で簡単じゃないけど、息子と伝統を守っていきたい」(角花さん)
その味わいは柔らかく、海の滋味がじんわり広がる。
撮影■太田真三
※週刊ポスト2014年7月11日号