6月14日、千葉県八千代市の14階建てマンションの最上階から母子4人が転落。母親が無理心中を図ったとみられている。警察庁の調査によれば、児童が巻き込まれる無理心中は2012年に36件、2013年に34件にのぼり、後を絶たないのが現状だ。八千代市の事件の後も、無理心中が起きている。
6月20日には滋賀県彦根市内の河川敷で女性(38才)が倒れているのが見つかり、病院に搬送されたものの意識不明の重体。女性は現場近くの橋から飛び降りたとみられている。女性の自宅では小学3年生(8才)の長男と幼稚園児の次男(4才)が死亡しており、長男の首にはひもで絞められたような痕があったことから、警察は無理心中の可能性があるとみている。
さらに同月24日には、大阪・鶴見区の民家でも心中と思われる事件が起きている。夕方、帰宅した夫から「自宅で妻と子供が死んでいる」との110番通報があり、警察官がかけつけると、小学4年生の長男(9才)が1階の風呂場で血を流して倒れ、3階の子供部屋では妻(33才)が首を吊っていた。
なぜ、親子心中、とりわけ母親が子供を道連れにするケースが相次いでいるのか。親子心中に詳しい子どもの虹情報研修センターの川崎二三彦氏はこう指摘する。
「母子心中では、男性関係のトラブルのほか、子供に障がいや病気があることで悩んでいたケースが多い。また、母親が精神的な疾患を抱えている場合も少なくありません」
周囲に気づかれなかったのはなぜなのか。
「親子心中は、それより前に日常的な虐待行為はない場合が多いので、周囲や関係機関は気づきにくい。また、心中の意図があることを隠していつも通りふるまうことも多く、おそらく夫でさえ気づかないでしょう。決断から実行までの時間が短いのも特徴で、その日に思い立って衝動的に行動に及ぶということもあるのです。事前に家族や知人に『死にたい』などと漏らす人もいますが、それを周囲が深刻に受けとめきれず、心中に至ることもある」(前出・川崎氏)
臨床心理士の矢幡洋氏は日常生活で家族や友人にこんなサインがあったら要注意だと指摘する。
「食欲が減っていたり、夜に寝ても午前3時、4時に目が覚めてその後、全然眠れなかったりしていたら、うつ状態にある可能性が高いので注意が必要です。悲観的なことばかり口にする、極端に口数が減る、といったこともひとつのサインです。『~に狙われている』など被害妄想的な言動が生じると、精神の失調が疑われます。周囲の人は早めの病院の受診を促すべきです」
前出の川崎氏はこう指摘する。
「一般論として心中を決意した時点で手遅れのことが多い。母親が過度のストレスを抱えているならば、周囲が日ごろの息抜きをさせてやったり、行政機関が育児サポートをしてあげたり、早急な対応が必要です」
※女性セブン2014年7月17日号