「米国では1600万~1800万人の依存症患者がいると推計されているが、実際に通院しているのはその15%程度に過ぎない。つまり、新薬発売に伴う宣伝によって、患者が“発掘”されていくという構図がある。今後、日本でも同様の推移が起きると考えられます」
すでにその兆候はある。フジ虎ノ門健康増進センターの精神科医、斉尾武郎氏はこう語る。
「アルコール依存症専門ではない私のもとにも、昨年の認可以降、“新薬を処方してください”と薬を指定して来院されるケースが増えています。しかし、そのうち本当に依存症の疑いが濃い人はわずかで、従来の依存症診断に当てはめれば『単なる酒好き』というべき方が大半なんです。そうした人はアルコール依存症ではなく、“アルコール依存症恐怖症”というべき状態なのです」
もちろん新薬は医学の進化の賜物であり、それによって多くの患者が救われれば歓迎すべきことである。当然、新薬を開発・販売する製薬会社が利益を上げることも否定すべきことではない。
が、医療技術や新薬は、あくまで「患者のため」のものである。患者を「カネのなる木」と見て、医療行政や医療業界の都合で「患者を増やす、育てる」という操作などあってはならない。
※週刊ポスト2014年7月18日号