昨年から、国内ではアルコール依存症を巡る動きが慌ただしい。昨年3月、国内で30年ぶりとなるアルコール依存症治療薬「レグテクト」が認可され、同年5月から発売が始まった。そして今年に入ると5月に日本精神神経学会が「アルコール依存症」の名称を「アルコール使用障害」に変更することを発表。そして翌6月には、多量飲酒や飲酒運転の予防対策を国や自治体の責務とする「アルコール健康障害対策基本法」が施行された(成立は昨年12月)。
「レグテクト」は、従来の治療薬である抗酒薬(アルコールを飲むと強烈な頭痛や吐き気を催すため、飲酒を避けるようになる効果がある)と異なり、脳の中枢神経に作用してアルコール摂取欲求を抑制する断酒補助剤だ。販売する日本新薬によれば、10年後の国内売上高は年間20億円、投与される患者数は4万人と見込まれている。
外国の例を見てみよう。英国で断酒補助剤は1989年に解禁された。2003年の服用者数は年間10万3000人だったが、10年後の2013年には18万人に増え、売り上げもそれに比例して8割増の年間313万ポンド(約5億4700万円)と急成長した(英健康社会福祉情報センター資料による)。
ここで注目すべきは、「画期的な新薬」が発売されたにもかかわらず、英国の重度アルコール依存症患者数が増え続けているという事実だ(2005年は3万6000人、2013年は32万5000人)。同様の傾向は米国でも確認されている。
その不思議な現象について、『怖くて飲めない! 薬を売るために病気はつくられる』(ヴィレッジブックス刊)の著者で医療ジャーナリストのアラン・カッセルズ氏が解説する。