しかし、足並みを揃えて変更した関西と違い、関東の電鉄各社は静観の構えを見せている。

「関西の動きは認識していますが、関東鉄道協会としては今後どのようにするか決めていません。事業者に寄せられる意見をもとに、各社が個別に対応していくと思います」(関東鉄道協会担当者)

 私鉄各社に確認すると、「これまで通り優先座席付近での電源オフを継続する予定」という回答ばかりが寄せられた。機器への影響がないのなら、関西方式に倣ったほうが乗客の利便性が高まると思えるのだが、関東の私鉄のベテラン乗務員はこう語る。

「関西と混雑具合の違いがある。関西は朝夕の通勤通学時間帯に混む程度だが、東京は時間、上下線に関係なく混んでいる路線も多い。“安全性が100%でなければ解禁できない”という姿勢です」

 確かに前述した総務省の検査には「3cm以上離れれば」という条件があった。ただ総務省に改めて確認すると、その3cm基準も、

「影響が出たものは脈動が1拍なくなる程度のもので、すぐに正常動作に戻りました。一時的に問題があっても、人が倒れるようなものではない。我々がルールをどうしてくださいといえる立場ではないが、できれば実態に合わせて見直してほしいと思います」

 前出の関東私鉄ベテラン乗務員が本音を明かす。

「結局のところ、問題が起きていないならそのままにしておこう、ということですね。関東はゴタゴタに巻き込まれたくないという意識が強いのか、クレームをいう乗客が少ないという事情があります」

 関西ではペースメーカー着用者から「電源オフをいわなくなってから、優先席付近でも携帯を使う人がいて不安になった」との声が上がっているという。

「トラブル、混乱防止の観点からも、全国的に優先座席での携帯マナーを統一することが望ましい。関西が総務省の指針で一気に動いたことを考えても、今度は国交省が指針を出して働きかけることが必要なのではないでしょうか」(鉄道アナリストの川島令三氏)

※週刊ポスト2014年7月25日・8月1日号

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