国内

台風8号の異変 今夏は巨大台風が何度も直撃する可能性あり

「7月では最強の台風」ともいわれた台風8号が沖縄・九州を北上していた時、日本近海の海面水温データは明らかな「異常」を示していた。ちょうど台風が辿ったルートにあたる沖縄近海では、7月7日の海面水温が30度を超えていた。例年よりも約2度高い数字。この水温上昇が巨大台風を生む大きな要因となった。

 7月4日に発生した台風8号は3日後には宮古島の南東で910ヘクトパスカルまで勢力を増し、最大瞬間風速は70m(秒速)を超えた。気象庁によれば、「これは走行中の2tトラックが簡単に横転するほどの威力」だといい、沖縄では60万人に避難勧告が出され、10万戸が停電。

 その後も日本列島に沿うように北上し、各地で数百mlの激しい雨を降らせた。鉄道や航空便に運休が相次ぎ、各地を大混乱に陥れた。

 台風シーズンといえば、8月から9月にかけてのはず。7月にここまでの規模の台風が日本を直撃するのは異例のことだ。東京大学先端科学技術研究センターの中村尚教授(気候変動科学)はこう説明する。

「7月の台風が大型化するのは大変珍しい。例年なら日本列島に近づくケースは少なく、沖縄付近をかすめて中国大陸に抜けていくことがほとんどです。

 過去には2007年7月に死者・行方不明者7人を出した台風4号がありますが、沖縄本島近くを通過した際の中心気圧は930ヘクトパスカルで最大風速は50mでした。今回の台風8号はそれに匹敵する規模でした」

 7月に上陸し、死者・行方不明者を出した台風は、2007年の4号以前はほとんど例がない。

「7月の巨大台風」が生まれた要因は複数ある。分析していくと、この夏は何度も巨大な台風が日本を直撃する可能性が導き出される。

 要因の一つが冒頭で触れた「海面水温が例年より高い」という現象である。気象予報士の森田正光氏が語る。

「台風が発生・発達するには海面水温が28度以上であることが条件の一つとされ、進路の水温が27度以上だと発達しやすい。暖かい水面から絶えず水蒸気が供給されることで勢力を増していくのです。

 今回の台風8号のケースでいえば、発生したフィリピン東方海域の海面が31~32度と平年に比べて2度ほど高く、進路となった沖縄近海でも同様だった。そうした条件下では、日本列島に上陸する直前まで台風は発達し続けます」

 7月7日時点での海面水温27度を境とする線は九州の南のあたりを通っている。この位置自体は平年並みだが、台風がそこに至るまでのルートの海面水温が高かったため「最強」規模にまで発達したと分析できる。

「昨年9月の台風18号が上陸直前まで発達を続け、死者6人、行方不明者1人の被害を残したのも、近海の海面水温が高いことが原因でした。それと同じ現象が、今年は7月の段階ですでに起きています」(前出・中村教授)

※週刊ポスト2014年7月25日・8月1日号

関連キーワード

トピックス

高市早苗氏が首相に就任してから1ヶ月が経過した(時事通信フォト)
高市早苗首相への“女性からの厳しい指摘”に「女性の敵は女性なのか」の議論勃発 日本社会に色濃く残る男尊女卑の風潮が“女性同士の攻撃”に拍車をかける現実
女性セブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン
日本全国でこれまでにない勢いでクマの出没が増えている
《猟友会にも寄せられるクレーム》罠にかかった凶暴なクマの映像に「歯や爪が悪くなってかわいそう」と…クレームに悩む高齢ベテランハンターの“嘆き”とは
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
浅香光代さんと内縁の夫・世志凡太氏
《訃報》コメディアン・世志凡太さん逝去、音楽プロデューサーとして「フィンガー5」を世に送り出し…直近で明かしていた現在の生活「周囲は“浅香光代さんの夫”と認識しています」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン
温泉モデルとして混浴温泉を推しているしずかちゃん(左はイメージ/Getty Images)
「自然の一部になれる」温泉モデル・しずかちゃんが“混浴温泉”を残すべく活動を続ける理由「最初はカップルや夫婦で行くことをオススメします」
NEWSポストセブン
宮城県栗原市でクマと戦い生き残った秋田犬「テツ」(左の写真はサンプルです)
《熊と戦った秋田犬の壮絶な闘い》「愛犬が背中からダラダラと流血…」飼い主が語る緊迫の瞬間「扉を開けるとクマが1秒でこちらに飛びかかってきた」
NEWSポストセブン
全米の注目を集めたドジャース・山本由伸と、愛犬のカルロス(左/時事通信フォト、右/Instagramより)
《ハイブラ好きとのギャップ》山本由伸の母・由美さん思いな素顔…愛犬・カルロスを「シェルターで一緒に購入」 大阪時代は2人で庶民派焼肉へ…「イライラしている姿を見たことがない “純粋”な人柄とは
NEWSポストセブン
真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン