ライフ

科学的根拠が希薄? 高価な「個人型検診」は不必要との意見

謎の美女が表紙を飾る『octo∞』

 20才当時の加賀まりこ(主演映画『月曜日のユカ』でのワンシーン)の表紙が印象的な50才以上の女性をターゲットにした新雑誌『octo∞』(オクトアクティブエイジング)では、ファッション、グルメ、経済など、大人の女性が知っておきたい様々な情報を発信している。

 なかでも、大人の女性にとって絶対に外せないのが医療に関する情報だ。50才以上の女性ともなれば、少なからず健康は気になってくるもので、「がん検診」を受けようと思っている人も多いはず。近ごろは、いろいろながん検診があるが、本当に受けるべき検診はどんなものなのだろうか? 『octo∞』に掲載された女性医療ジャーナリスト・増田美加さんによるコラムを抜粋して紹介する。

 * * *
 最近、豪華なホテルでの宿泊や、優雅なランチがついたちょっとセレブな人間ドックが話題です。でも、高いお金を払えばいい医療を受けられるとは限りません。

 そもそも「検診」は、エビデンス=科学的根拠が非常に重要な医療です。けれども、エビデンスの低い、またはないに等しい検診が行われているのが現状。そこで、受けるべき検診と、受ける必要がない(二の次でよい)検診を知っておきましょう。

 まず前提として、「検診なんて、症状が出てからでいいわ」というのは大きな間違いです。症状がない健康な人に広く行う医療が「検診」。つまり予防の一種なのです。

 また、検診には、大きく分けて、国が推奨する「対策型検診」と人間ドックなどの「任意型・個人型検診」の2つがあります。人間ドックの費用が高いのは、健康保険が使えない自費だから。検診でも、エビデンスのある、国が推奨して行う検診には自治体や企業の補助がつくため、無料かつ安価です。ムダに高い人間ドックを優先的に受ける必要はありません。

 では、早期発見のために受けるべき、エビデンスのある検診とは? ズバリ、「胃がん」「大腸がん」「肺がん」「乳がん」「子宮頸がん」の5つのがん検診と、生活習慣病対策の「検診」です。

 それ以外は、受けることによる利益と不利益を検討して、個人の判断で決めなくてはなりません。ぶっちゃけていうと、今、増えているアンチエイジングドックなどの検診は、ほとんどエビデンスがない、あるいはかなりエビデンスの低い検査項目が多いのが現実です。つまり、受けなくてもいい検診を、みなさんありがたがって高額払って受けているということ。

 このご時世、病院も経営が大変ですから、高額の収入が得られる検査を行いたい気持ちはよくわかります。けれど、本来ならエビデンスの低い検診を行うときは、医療機関や医師が、受信する私たちに対して、利益と不利益について十分説明する義務があるのです。

 もちろん、5つのがん検診を受け、生活習慣検診も受けた上で、さらにお金と時間に余裕のある人が、納得してそれ以外の検診を受けるのは自由です。でも「高額の費用を出して受ける価値があるだろうか?」と、私は正直疑問です。

「いやいや、国が推奨する検診は、国家の医療費対策とか、国全体のため。それよりも、1人ひとりを大切にした個人型検診を受けるべきだ!」という医療者もいます。

 でも、それは違う。なぜなら、「死亡率を減らすというエビデンスがある」検診というのは、「個人」に効果があることの証明の積み重ねだからです。個人のメリットの集積が集団としてのメリットとなります。つまり、国が推奨しているがん検診は、国民全体のためだけでなく、個人にとっても効果があるという証。「個人が受けるがん検診」と「国のがん対策としてがん検診」とは、要は同じなのです。

 たとえ、最新機器の先端ハイテク技術を使ったテーラーメイドの人間ドックを受けても、国の推奨している検診以外の検査項目のエビデンスは低くなります。不必要なもの、不利益が上回るものが含まれている“可能性が高い”んです。なんでもかんでも、数多くの検診を受ければいいってものではないのです。

関連キーワード

関連記事

トピックス

夜逃げした「郷土料理 たち川」に、食品偽装があったという(左はinstagramより、右は従業員提供)
「飛騨牛はホルスタイン、天然鮎は養殖モノ…」岐阜・池田温泉、町が委託したレストランで“食品偽装疑惑”「仕入れ先が減り、オーナー自らスーパーで割引の商品を…」【7月末に夜逃げしていた】
NEWSポストセブン
痩せる前のエヴィヤタルさん(インスタグラムより)
「弟はもはやガイコツ」「この穴は僕が埋葬される場所だろう」…ハマスが“人質が自分の墓を掘る”動画を公開し世界各国から非難噴出《飲まず食わずで深刻な飢餓状態》
NEWSポストセブン
本州に生息するツキノワグマ。体長120~180センチほど。最近では獣害の被害が増えている(イメージ)
《襲われる被害が多発》クマに悩まされる養蜂家たちが告白 「今年はあきらめるしかない…」「槍を作って山に入るヤツもいる」
NEWSポストセブン
デコラファッションで小学校に登校していたいちかさん、中学生となり衝撃の変貌を遂げていた…!
《デコラ小学生が衝撃の変貌》グリーン&ゴールド髪が“黒髪少女”に大転身「ほぼスッピンのナチュラルメイクで中学に登校する」意外な理由とは
NEWSポストセブン
昨年に第一子が誕生したお笑いコンビ「ティモンディ」の高岸宏行、妻・沢井美優(右・Xより)
《渋谷で目立ちすぎ…!》オレンジ色のサングラスをかけて…ティモンディ・高岸、“家族サービス”でも全身オレンジの幸せオーラ
NEWSポストセブン
“原宿系デコラファッション”に身を包むのは小学6年生の“いちか”さん(12)
《話題のド派手小学生“その後”》衝撃の「デコラ卒アル写真」と、カラフル卒業式を警戒する学校の先生と繰り広げた攻防戦【『家、ついて行ってイイですか?』で注目】
NEWSポストセブン
収監の後は、強制送還される可能性もある水原一平受刑者(写真/AFLO)
《大谷翔平のキャスティングはどうなるのか?》水原一平元通訳のスキャンダルが現地でドラマ化に向けて前進 制作陣の顔ぶれから伝わる“本気度” 
女性セブン
「池田温泉」は旅館事業者の“夜逃げ”をどう捉えるのか(左は池田温泉HPより、右は夜逃げするオーナー・A氏)
「支払われないまま夜逃げされた」突如閉鎖した岐阜・池田温泉旅館、仕入れ先の生産者が嘆きの声…従業員が告発する実情「机上に請求書の山が…」
NEWSポストセブン
バラエティ、モデル、女優と活躍の幅を広げる森香澄(写真/AFLO)
《東京駅23時のほろ酔いキャミ姿で肩を…》森香澄、“若手イケメン俳優”を前につい漏らした現在の恋愛事情
NEWSポストセブン
柳沢きみお氏の闘病経験は『大市民 がん闘病記』にも色濃く反映されている
【独占告白】人気漫画家・柳沢きみお氏が語る“がん闘病” 今なお連載3本を抱え月産160ページを描く76歳が明かした「人生で一番楽しい時間」
週刊ポスト
芸能界の“三刀流”豊田ルナ
芸能界の“三刀流”豊田ルナ グラビア撮影後に語った思い「私の人生は母に助けられている」
NEWSポストセブン
ラーメン二郎・全45店舗を3周達成した新チトセさん
「友達はもう一緒に並んでくれない…」ラーメン二郎の日本全国45店舗を“3周”した新チトセ氏、批判殺到した“食事は20分以内”張り紙に持論
NEWSポストセブン