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親が不動産多く保有していたら一般社団法人設立が相続税対策に

 2015年1月から相続税の課税が強化されるが、特に親が不動産を多く保有している人たちの相続税対策として注目を集めているのが「会社の設立」だ。

 会社を作ると聞くと煩雑な手続きがありそうで敬遠しがちだが、「一般社団法人(※注)」は設立時に資本金もいらず、理事1名、社員が2名以上(理事が兼務可)いれば簡単に設立できる。最近は数万円の手数料で設立申請を代行する業者も増えている(別途、登録免許税など10万円強の費用が必要)。

【※注】一般社団法人/2008年に制度化された。2人以上の社員が集まれば資本金がなくても設立できる。団体名義で不動産取得や銀行口座の開設ができるなどのメリットがある。

 例えば父(被相続人)を代表理事にして、母や子供を理事(社員)にする。そして被相続人が所有しているアパートなど収益不動産をその法人に売却・贈与するなどして資産を移転し、節税につなげる人が増えている。目安として、個人にかかる所得税が33%以上の人ならば法人化するメリットがあるといえる。税理士法人アフェックスの公認会計士・金子尚貴氏が解説する。

「もし株式会社を作った場合は株主(親=被相続人)が会社の財産権を持つので、株主の死亡時に相続税が課せられます。つまり、会社が儲かるほど相続税も増える。

 対して一般社団法人の場合は出資持ち分がなく、株主などが存在しません。つまり一般社団法人が保有する財産には相続税がかからない。これが今、不動産を持つ人に一般社団法人が注目されている理由です」

 法人が収益不動産などで儲けて利益を出せば、それを母や子供に給料として支払うことで所得を分配できる。給料には所得税が発生するが、給与所得控除を受けられるため納税額は低く抑えられる。

 このスキームのポイントは、長期間にわたって法人を運営することで、一族間でコツコツ財産を分配できる点にある。そのため若い世代の節税術に向いている。

「理事である被相続人が死亡した時には、法人から死亡退職金が支払えます。受取人は遺族になって相続税がかかりますが、死亡退職金には基礎控除とは別に〈500万円×法定相続人の人数〉の非課税枠があるので、効果的な節税になります」(前出・金子氏)

 いくつか注意点がある。社員が0人になると法人は解散、残余財産は国・自治体の所有物になる可能性がある。また、社員が亡くなるなどして新たな人員を入れる場合、親族以外から補充すれば、財産が親族外に流出することも考えられる。ファミリーオフィスコンサルティングの税理士・長嶋佳明氏の話。

「被相続人が一般社団法人に不動産を売却する際は所得税、贈与するなら法人側に贈与税がかかります。いったん法人に移した資産を個人名義に戻す場合にも再度、税金がかかります」

 だから長期間、安定して法人を運営できることが肝要なのだ。

※週刊ポスト2014年8月8日号

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