「脱法ハーブ」改め、「危険ドラッグ」のニュースがやたら目に付くようになった。名称はともかく、その根本的な解決はどうあるべきか。コラムニストのオバタカズユキ氏が考える。
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今年は、「危険ドラッグ」の夏である。
7月22日に警察庁と厚生労働省が、(私の印象としては唐突に)これまで「脱法ハーブ」「脱法ドラッグ」と呼ばれていたブツを、これからは「危険ドラッグ」の新呼称に改める、と発表した。
「ドラッグ」という言葉は「麻薬」の意味でも使われてきたので、わざわざそれに「危険」をかぶせると、「危険が危ない」的な重複表現になってしまいヘンである。しかも、造語として安直感があり、ちっとも危険な気配がしない。案の定、ネットの世界では、そのセンスなさが槍玉に挙げられ、「母さん助けて詐欺(元・振り込め詐欺)」や「E電(元・国電)」のような運命をたどるだろう、と呆れられた。
ところが、である。発表の次の日から、各種メディアはみんなためらいなく「危険ドラッグ」の呼称を躍らせた。
<危険ドラッグ>逮捕の前神奈川県議「2年前から始めた」(毎日新聞7/23)、
路上で男性倒れる危険ドラッグ吸引か(日本テレビ系7/23)、「危険ドラッグ」所持容疑高校生ら男女2人を逮捕(朝日新聞デジタル7/23)、危険ドラッグ工場を摘発=植物片混ぜ「ハーブ」に(時事通信7/23)……。
発表翌日だけでこんなに大量の関連ニュースが流れた。そして、その勢いはいまだに衰えない。主なものだけかいつまもう。
大阪府警などが「危険ドラッグ」店一斉立ち入り(産経新聞7/24)、<危険ドラッグ>女子高生、少年を所持容疑で逮捕山梨で初(毎日新聞7/24)、危険ドラッグ、車暴走3人けが=無免許容疑で26歳男逮捕―大阪府警(時事通信7/25)、「ストレス解消」と巡査部長、危険ドラッグ所持(読売新聞7/26)、危険ドラッグ撲滅訴え渋谷で住民らイベント(TBS系7/27)、危険ドラッグ使用の疑い強い場合、物損事故でも現行犯逮捕へ(TBS系7/28)、危険ドラッグ吸引して高速道路運転、男を逮捕(読売新7/29)、危険ドラッグ吸引か信号待ちの車に追突、無職男を逮捕(産経新聞7/29)……。
もうお腹いっぱいである。と同時に、すでに「危険ドラッグ」という呼称に違和感を覚えなくなっている自分を発見する。ヘンだ、センスがないと感じた造語でも、繰り返し目にすることで簡単に慣れてしまうものなのだ。
それにしても、こうしてニュースの見出しを並べてみると、国を挙げて危険ドラッグ撲滅モードに突入している勢いの程がわかる。ご存知の通り、「危険ドラッグ」は化学構造の一部を変えた新しいブツが容易につくられるため、いくら違法指定してもキリがない厄介な薬物だ。また、覚せい剤や大麻と違い、規制物質の有無を確かめる簡易検査キットがなく、現行犯逮捕ができないともいわれている。
けれども、この夏の「危険ドラッグ」ニュースを見ている限り、そんな「法律の限界」なんか関係ないかのごとくである。実際、何人も所持容疑で逮捕しまくっているし、ドラッグ工場も摘発しているし、ドラッグでよろよろ運転している者は過労運転を禁止する道交法を適用して現行犯逮捕できているのだ。国や警察がその気になれば、やりようはいろいろなのだ。