事実、コメに関しては2013年春に広東省が業者に対して行った抜き打ち検査で、全18サンプルのうち8件が国の基準を上回るカドミウムを含んでいたことが明らかにされたばかりだ。
当時、私は香港にいたのだが大陸との間を荷物を担いで往復する「水客」と呼ばれる密輸業者――といってもアルバイトの老人や主婦たちなのだが――の荷物の中身が粉ミルクから米に変わったという噂が流れ、香港の人々の買うコメがスーパーから無くなってしまうのではないかと心配する声まで聞かれたのを覚えている。
ただ、カドミウム汚染のコメという意味では、この時点でもはや中国の消費者には新しい問題ではなかった。
というのもすでに2011年2月、中国の週刊誌『新世紀』が〈カドミウム汚染米の殺意〉というタイトルで大キャンペーンをはって社会問題としていたからだ。
つまり、少なくとも2011年から今日まで、当局がどれほど厳しく取り締まっても実態は何も変わらなかったということなのだ。この点が、一度大騒ぎすると社会の価値観が大きく変わる日本社会との違いだろう。