ライフ

橋本治「ありのままでと歌うなら、つけまつげはずして歌え」

 結婚したいけど相手がいない女性の心情を綴った橋本治さんの新作長編『結婚』(集英社/1620円)。この作品には一体どんな思いが込められているのか? 橋本さん本人に話を聞いた。(取材・文/佐久間文子)

 * * *
 直球ど真ん中のタイトルである。

「60才過ぎた男が何でこんな小説? って感じですけど、結婚について考えさせなきゃいけないなと。『早く結婚しなよ』って要するに議会のセクハラやじ飛ばすおやじと同じ発想(笑い)。でも、物は言いようで、言うからには考えて言わないとね」(橋本治さん、以下同)

 小説の主人公は、旅行会社に勤める28才の倫子。恋愛は苦手だが、「卵子が老化する」と知り、にわかに結婚が現実の問題として目の前に立ちふさがる。友人の結婚。兄の結婚。元彼の結婚と離婚。どれもしっくりこない倫子は「自分の結婚」について真剣に考え始める。

「今の時代、結婚って、何だかもやもやしてよくわからないじゃないですか。そのあたりの『結婚のアマチュア』的状況を、全部小説に書いてみようと思いました」

 倫子は「相手がいない」と認識することから一歩を踏み出す。どうすれば相手が見つかるか教えてくれる人もいないまま、自力で相手を見つけなければならない現実がそこにある。

「卵子老化の問題が出てきたのは、『早く結婚する』ことの動機づけになりますね。これまでは、子供を産むという生物学的な制限があるのに、個人の主張する自由を社会が追認していただけといえますから」

 老いについてもそれは同じことで、かつては40才なら大体これぐらい、50才ならこう、という共通認識があり、それに合わせて年をとることもできた。「それが今は、自分の外側に基準がなくなり、老いを病気のように考えてしまう」と橋本さんは言う。

「『美魔女』なんて、少女の干物みたいなものじゃないですか。ある意味、今は女性をわがまま放題の女子高生のまま放置しているところがあると思うんです。『ありのままで♪』って歌うんなら、つけまつげはずして歌えよな、って思いません?」

 小説の中の、《女にとっての結婚は、多く『男と結婚する』ではなく、『自分の結婚と結婚する』だ》──は至言。自分なりの結婚を考える女に比べて、男は無造作で無防備に見える。

 結婚が「女の問題」とされてしまう社会を「優しくない」とも。

「女が結婚しないし子供を産まないのは問題だって言うけど、なぜ女が結婚しなくてもいいという選択肢を持つのか、結婚したほうがいいって思わないのか、それを考えない限り打開策なんて生まれないと思うんだけど」

 自由と自己肯定に流れる世の中を、それでいいのかと考えさせる。

「流れの前に立ち塞がれるとは思わないけど、皮肉ぐらい言っておきたい。年寄りしか言わないようなことをこの本では書きたかったんです」

※女性セブン2014年8月21・28日号

関連記事

トピックス

足を止め、取材に答える大野
【活動休止後初!独占告白】大野智、「嵐」再始動に「必ず5人で集まって話をします」、自動車教習所通いには「免許はあともう少しかな」
女性セブン
今年1月から番組に復帰した神田正輝(事務所SNS より)
「本人が絶対話さない病状」激やせ復帰の神田正輝、『旅サラダ』番組存続の今後とスタッフが驚愕した“神田の変化”
NEWSポストセブン
大谷翔平選手(時事通信フォト)と妻・真美子さん(富士通レッドウェーブ公式ブログより)
《水原一平ショック》大谷翔平は「真美子なら安心してボケられる」妻の同級生が明かした「女神様キャラ」な一面
NEWSポストセブン
裏金問題を受けて辞職した宮澤博行・衆院議員
【パパ活辞職】宮澤博行議員、夜の繁華街でキャバクラ嬢に破顔 今井絵理子議員が食べた後の骨をむさぼり食う芸も
NEWSポストセブン
《那須町男女遺体遺棄事件》剛腕経営者だった被害者は近隣店舗と頻繁にトラブル 上野界隈では中国マフィアの影響も
《那須町男女遺体遺棄事件》剛腕経営者だった被害者は近隣店舗と頻繁にトラブル 上野界隈では中国マフィアの影響も
女性セブン
山下智久と赤西仁。赤西は昨年末、離婚も公表した
山下智久が赤西仁らに続いてCM出演へ 元ジャニーズの連続起用に「一括りにされているみたい」とモヤモヤ、過去には“絶交”事件も 
女性セブン
日本、メジャーで活躍した松井秀喜氏(時事通信フォト)
【水原一平騒動も対照的】松井秀喜と全く違う「大谷翔平の生き方」結婚相手・真美子さんの公開や「通訳」をめぐる大きな違い
NEWSポストセブン
海外向けビジネスでは契約書とにらめっこの日々だという
フジ元アナ・秋元優里氏、竹林騒動から6年を経て再婚 現在はビジネス推進局で海外担当、お相手は総合商社の幹部クラス
女性セブン
大谷翔平の伝記絵本から水谷一平氏が消えた(写真/Aflo)
《大谷翔平の伝記絵本》水原一平容疑者の姿が消失、出版社は「協議のうえ修正」 大谷はトラブル再発防止のため“側近再編”を検討中
女性セブン
被害者の宝島龍太郎さん。上野で飲食店などを経営していた
《那須・2遺体》被害者は中国人オーナーが爆増した上野の繁華街で有名人「監禁や暴力は日常」「悪口がトラブルのもと」トラブル相次ぐ上野エリアの今
NEWSポストセブン
交際中のテレ朝斎藤アナとラグビー日本代表姫野選手
《名古屋お泊りデート写真》テレ朝・斎藤ちはるアナが乗り込んだラグビー姫野和樹の愛車助手席「無防備なジャージ姿のお忍び愛」
NEWSポストセブン
運送会社社長の大川さんを殺害した内田洋輔被告
【埼玉・会社社長メッタ刺し事件】「骨折していたのに何度も…」被害者の親友が語った29歳容疑者の事件後の“不可解な動き”
NEWSポストセブン