ライフ

エロ漫画歴40年の国友やすゆき氏 「家庭のエロスが面白い」

「日本一のスケベ」を自称する100万部雑誌の編集者の活躍を描いた『JUNK BOY』は累計500万部を超えるヒットとなり、本誌連載で話題を呼んだ『×一(バツイチ)』は19巻を数えた。『100億の男』『幸せの時間』など映像化作品も多い漫画家・国友やすゆき氏は、かつて三流劇画雑誌で研鑽を積んだひとりである。

 * * *
 1977年に『チャンスコミック』という劇画雑誌の創刊号の仕事の話をいただいて、江戸川乱歩の『人間椅子』を描いたんだよ。大学在学中の1974年に『少年ジャンプ』でデビューして手塚賞の佳作をもらったけど、その後鳴かず飛ばずで10年くらい“ドサ回り”をしていた。その一環だね。

 当時は雑誌も描き手も玉石混淆。ひどい雑誌も多かった。電話1本で依頼がきて、こっちも「描きますよ」って返事するんだけど、打ち合わせもなく執筆がスタートする。それで描き上がったらバイトが取りに来ての繰り返し。連載終了時の挨拶で初めて担当の編集者と顔を合わせるなんてこともあった(笑い)。

 それでも商売になっていたほど、あの時代の漫画の勢いは凄かった。僕も多いときで月150枚は描いてたな。レギュラーのアシスタントなんて当然いないから、早大の漫研の後輩呼んできて描かせたりしたよ。

 そのうち人の縁が繋がって、少年誌でエロなしの作品を描くようになった。同時に劇画誌でエロもあるドタバタコメディの読み切りを描いたりもしていて、それが『漫画アクション』で連載した『JUNK BOY』に繋がったんだよ。ジェットコースター的な展開の中にエロの要素もある──それが自分のスタイルになっていった。

 大人のエンターテインメントを考えたときに、僕は「欲望」が重要なテーマだと思ってる。高尚なものもあっていいけど、漫画が本来持っていた俗で下衆なパワーは失ってほしくない。僕の持ち味もそういうB級テイスト。疲れたお父さんが読み捨てにするもの、ラーメン屋で何も考えずに読むものでいいんだよ。

 その後思いついたのが『幸せの時間』や『×一(バツイチ)』などのホームドラマ。家庭が持っているエロスだった。サラリーマンがいて家庭があって、そこに性の話が出てくるんだけど、読者も距離感が近いからリアリティを感じてくれる。

 それまで家庭のエロスをテーマにした漫画ってなかったんだ。ホームドラマはあっても、本来そこにあるべきものが描かれてない。僕はそんなタブーを描こうと思ったんだ。家庭の根本とは、男と女が一つ屋根の下で暮らして、夫婦生活をすること。性は夫婦にとって大前提のはずなのに、隠さなきゃいけない。だから齟齬が生まれる。そこが面白い。

 僕はこれからも人間の欲望にスポットを当てる作業をしていくよ。

※週刊ポスト2014年8月15・22日号

関連記事

トピックス

“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
《ママとパパはあなたを支える…》前田健太投手、別々で暮らす元女子アナ妻は夫の地元で地上120メートルの絶景バックに「ラグジュアリーな誕生日会の夜」
NEWSポストセブン
グリーンの縞柄のワンピースをお召しになった紀子さま(7月3日撮影、時事通信フォト)
《佳子さまと同じブランドでは?》紀子さま、万博で着用された“縞柄ワンピ”に専門家は「ウエストの部分が…」別物だと指摘【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
一般家庭の洗濯物を勝手に撮影しSNSにアップする事例が散見されている(画像はイメージです)
干してある下着を勝手に撮影するSNSアカウントに批判殺到…弁護士は「プライバシー権侵害となる可能性」と指摘
NEWSポストセブン
亡くなった米ポルノ女優カイリー・ペイジさん(インスタグラムより)
《米ネトフリ出演女優に薬物死報道》部屋にはフェンタニル、麻薬の器具、複数男性との行為写真…相次ぐ悲報に批判高まる〈地球上で最悪の物質〉〈毎日200人超の米国人が命を落とす〉
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
「プラトニックな関係ならいいよ」和久井被告(52)が告白したキャバクラ経営被害女性からの“返答” 月収20〜30万円、実家暮らしの被告人が「結婚を疑わなかった理由」【新宿タワマン殺人・公判】
NEWSポストセブン
松竹芸能所属時のよゐこ宣材写真(事務所HPより)
《「よゐこ」の現在》濱口優は独立後『ノンストップ!』レギュラー終了でYouTubeにシフト…事務所残留の有野晋哉は地上波で新番組スタート
NEWSポストセブン
山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
早朝のJR埼京線で事件は起きた(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」に切実訴え》早朝のJR埼京線で「痴漢なんてやっていません」一貫して否認する依頼者…警察官が冷たく言い放った一言
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《前所属事務所代表も困惑》遠野なぎこの安否がわからない…「親族にも電話が繋がらない」「警察から連絡はない」遺体が発見された部屋は「近いうちに特殊清掃が入る予定」
NEWSポストセブン