投資情報会社・フィスコ(担当・小瀬正毅氏)が、8月18日~8月22日のドル・円相場の見通しを解説する。
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今週のドル・円は、ウクライナ情勢や中東情勢に警戒しつつ、ジャクソンホール・シンポジウムでのイエレン連邦準備制度理事会(FRB)議長の講演に注目する展開となる。
ウクライナの紛争が激化した場合、イラクが内戦に陥った場合、パレスチナ紛争が激化した場合は、リスク回避の円買い圧力が強まることになる。しかしながら、日米の金融政策の乖離観測や年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)による外貨建て資産への投資増額期待から、ドルの下値は限定的と予想される。
【7月の連邦公開市場委員会(FOMC)議事録】(20日)
7月29-30日の連邦公開市場委員会(FOMC)議事録では、6月同様に、出口戦略に向けた協議内容を見極めることになる。6月のFOMCでは、超過準備の付利の見直しやリバースレポファシリティーが協議されたが、7月は、さらに踏み込んだ協議が行われたか否か、利上げの時期などを見極めることになる。
【ジャクソンホール・シンポジウム】(22日)
イエレンFRB議長は、21-23日にワイオミング州ジャクソンホールで開催される金融・経済シンポジウム「テーマ:労働市場のダイナミズムの再評価」で、「労働市場」について講演する。イエレンFRB議長は、「イエレン・ダッシュボード」で注視している9つの雇用関連指標がリセッション(景気後退)前の水準を回復するまで、利上げに踏み切らない、と明言している。
労働参加率、不完全雇用率、長期失業者の割合、などが依然としてリセッション(景気後退)前の水準を回復していないことで、イエレンFRB議長は、これまで通りに、労働市場の脆弱さに言及し、利上げ時期に関する明言はない、と予想される。
【中東の地政学的リスク】
オバマ米大統領がイラク北部のアルカイダ系の武装組織に対して限定的な空爆を実施していることで、オバマ米政権の中東からの撤退シナリオが逆戻りする可能性、シリアやパレスチナ紛争も絡んで、中東全域での地政学的リスクが高まりつつある。イラクが内戦に陥った場合、原油価格が上昇することで、原発稼動停止で原油輸入の依存度が高い日本経済にはマイナス要因、貿易赤字の拡大により円安要因となる。
【ウクライナ紛争】
ウクライナと親ロシア武装勢力との武力衝突は継続しており、欧米によるロシアへの懲罰的追加制裁、ロシアによる報復措置などで、欧米とロシアの対立は長期化する可能性が高まりつつある。
プーチン露大統領は、「ウクライナ軍と親ロシア派武装集団の戦闘停止に全力を尽くす」と述べており、紛争の早期終結期待が高まっている。ウクライナ東部での紛争が激化した場合、リスク回避の円買い圧力が強まることになるが、第2次冷戦の構図からは「有事のドル買い」となる可能性にも警戒することになる。
8月18日-22日に発表予定の主要経済指標のポイントは次の通り。