一方、麗澤大学教授の八木秀次氏は「前奏なし」が正しいとの意見だ。
「君が代は『和歌披講』という和歌の詠み上げ方の流れを汲みます。これは、各々が詠み上げるうち徐々に調子が揃っていくというものです。その伝統に則れば、前奏がないのが本来のあり方といえる」
さらに八木氏はこう続ける。
「国歌に前奏があるかないかが議論となる国など他にありません。いかに日本が国歌を蔑ろにしてきたかの表われです。
6年後に東京五輪を控えるなか、国旗国歌法に基づいて国が統一指針を出すべき。行事の主催団体によって前奏の有無が異なるなんておかしい」
漫画家の小林よしのり氏は、「前奏の有無」が論争となることに時代の変化を感じたという。
「この論争は、君が代をどう歌うべきかが前提になっていますよね。少し前までは全国的に日教組が強く、学校で君が代を習わない地域も多かった。そんな頃を思えば隔世の感があります」
小林氏が語るように、日本の君が代論争は「歌うか歌わないか」の議論が長く続いてきた。今回の「前奏論争」は、「国歌を歌う」という世界の常識に、日本が近づいた証拠なのかもしれない。
※週刊ポスト2014年9月12日号