2点目は「記者のサラリーマン化」だ。朝日関係者の1人は「社内がヒラメ集団化している」と私に語った。池上彰氏のコラム掲載拒否問題では社長が感想を漏らして、担当役員が最終判断したという。役員は社長の顔色を気にしたのではないか。

 スタンス先行もヒラメ集団化も朝日だけの問題ではない。たとえば、私が在籍する東京新聞は「赤旗よりも左」と言われている。スタンスが先行している場合はないか。

 ヒラメ集団化は言い換えると「読者を向いて仕事をしていない」という話である。断言するが、新聞記者ほど顧客を気にしないサラリーマンはない。記者がだれに向けて記事を書いているかといえば、デスクである。

 デスクたちに評判がよくないと、出世競争に勝てない。花形の特派員になれないどころか、悪くすると飛ばされる。デスクはといえば部長の、部長は局長、局長は役員、役員は社長の顔色を見て仕事をしている。それでは社内のチェック機能が働かない。

 これはどこにでもある話だが、新聞は独立性を錦の御旗に掲げているから、余計に勘違いがひどくなる。「客の気持ちなど関係ない」といわんばかりなのだ。残念ながら、これが現状ではないか。

 今回の朝日事件で何を教訓にすべきか。「読者あってのジャーナリズム」という原点に戻る。これに尽きると思う。政府と戦うから独立性が保てるのではない。読者が支持してくれるからこそ自由な議論を展開できるし、ときには政府とも戦えるのだ。

 このコラムだって読者の支持がなければ、あっという間に終了である。あらためて自戒したい。

文/長谷川幸洋(はせがわ・ゆきひろ) 東京新聞・中日新聞論説副主幹。1953年生まれ。ジョンズ・ホプキンス大学大学院卒。規制改革会議委員。近著に『2020年 新聞は生き残れるか』(講談社)

※週刊ポスト2014年10月17日号

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