国内

決めつけとサラリーマン化が新聞の病因と東京新聞論説副主幹

 朝日新聞の誤報問題が尾を引いている。週刊誌には本誌を含めて毎週、続報が出るし、テレビも「たかじんのそこまで言って委員会」や「朝まで生テレビ!」が扱った。

 これは朝日の問題だが、朝日にとどまらず、実は新聞一般に共通する病因もあるのではないか。取材した朝日関係者や番組で同席した朝日OBたちの話を聞きながら、私はそう思うようになった。

 それは2点ある。まず「スタンス先行」の報道姿勢だ。朝日は故・吉田清治氏のデタラメ話を16回も報じた。1989年に現地の新聞が事実無根と報じているのに、その後も論説委員がコラムでとりあげ、同氏を「腹がすわっている」とまで持ち上げている。

 元慰安婦の告白についても、話の内容が会見や裁判でコロコロと変わっていたのに、記者は録音テープの話を聞いただけで記事にした。あきらかに取材が甘い。

 そうなったのは「旧日本軍の悪行を断罪する」という記者や論説委員のスタンスが優先されたからだろう。主張が先にあって、肝心の事実確認がなおざりにされたのだ。

 そんな姿勢は原発事故の吉田調書報道にも共通している。担当した記者は自分の著書で「これは原発放棄事件だ」と断定的に書いている。「原発を放棄しようとした東京電力を批判する」というスタンスが先にあった。

 取材は白いキャンバスに絵を描くような仕事ではない。記者が問題意識をもって「これはこういう話ではないか」という仮説を基に取材を始める。だが多くの場合、仮説は事実によって裏切られる。そこでどう仮説を修正し、新たな事実を掘り起こせるかが記者の力量である。

 自分の立場に固執するとどうなるか。仮説を修正できず、主張に都合がいい事実だけをつまみ食いするようになる。誤報はこうして起きた。

関連キーワード

関連記事

トピックス

運転席に座る広末涼子容疑者
《事故後初の肉声》広末涼子、「ご心配をおかけしました」騒動を音声配信で謝罪 主婦業に励む近況伝える
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン
真美子さん着用のピアスを製作したジュエリー工房の経営者が語った「驚きと喜び」
《真美子さん着用で話題》“個性的なピアス”を手がけたLAデザイナーの共同経営者が語った“驚きと興奮”「子どもの頃からドジャースファンで…」【大谷翔平と手繋ぎでレッドカーペット】
NEWSポストセブン
鶴保庸介氏の失言は和歌山選挙区の自民党候補・二階伸康氏にも逆風か
「二階一族を全滅させる戦い」との声も…鶴保庸介氏「運がいいことに能登で地震」発言も攻撃材料になる和歌山選挙区「一族郎党、根こそぎ潰す」戦国時代のような様相に
NEWSポストセブン
山尾志桜里氏に「自民入りもあり得るか」聞いた
【国民民主・公認取り消しの余波】無所属・山尾志桜里氏 自民党の“後追い公認”めぐる記者の直撃に「アプローチはない。応援に来てほしいくらい」
NEWSポストセブン
レッドカーペットを彩った真美子さんのピアス(時事通信)
《価格は6万9300円》真美子さんがレッドカーペットで披露した“個性的なピアス”はLAデザイナーのハンドメイド品! セレクトショップ店員が驚きの声「どこで見つけてくれたのか…」【大谷翔平と手繋ぎ登壇】
NEWSポストセブン
竹内朋香さん(左)と山下市郎容疑者(左写真は飲食店紹介サイトより。現在は削除済み)
《浜松ガールズバー殺人》被害者・竹内朋香さん(27)の夫の慟哭「妻はとばっちりを受けただけ」「常連の客に自分の家族が殺されるなんて思うかよ」
週刊ポスト
サークル活動に精を出す悠仁さま(2025年4月、茨城県つくば市。撮影/JMPA)
《普通の大学生として過ごす等身大の姿》悠仁さまが筑波大キャンパス生活で選んだ“人気ブランドのシューズ”ロゴ入りでも気にせず着用
週刊ポスト
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
遠野なぎこさん(享年45)、3度の離婚を経て苦悩していた“パートナー探し”…それでも出会った「“ママ”でいられる存在」
NEWSポストセブン
レッドカーペットに登壇した大谷夫妻(時事通信フォト)
《産後“ファッション迷子期”を見事クリア》大谷翔平・真美子さん夫妻のレッドカーペットスタイルを専門家激賞「横顔も後ろ姿も流れるように美しいシルエット」【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 石破政権が全国自治体にバラ撒いた2000億円ほか
「週刊ポスト」本日発売! 石破政権が全国自治体にバラ撒いた2000億円ほか
NEWSポストセブン