中国では共産党が農民からタダ同然で収奪した土地を高収益の見込める商業地に転換し、その差額を地方政府が稼いでいる。農地を商業地にする開発事業は地方政府ではなく傘下の投資会社(地方融資平台)が行ない、そこに出入りしているデベロッパーが請け負う。
このためデベロッパーは便宜を図ってくれる地方政府の役人たちにお礼をしなければならない。だが、そのまま現金を渡したら当局に捕まるリスクが高い。ここで登場するのが、資金移動をしても足の付かないカジノだ。
まずデベロッパーたちは役人たちをマカオに招待する。あらかじめ渡りをつけてあるカジノにお金を渡し、客を勝たせるように、ディーラーを言い含めておく。ただし、一気に勝つと周囲に怪しまれるため、ディーラーとの「あうん」の呼吸で一進一退の攻防を繰り広げながら、一晩かけて数億円が稼げる仕掛けになっている。
ただし、マカオに行く交通費と最初の賭け金は役人が自分で払っている。この方法であれば、単にカジノで大勝ちしただけで収賄には当たらない、と言い逃れができるわけだ。
マカオ政府統計局の発表によれば、マカオを訪れた旅行客の平均滞在時間は「24時間」である。VIPルームで遊ぶハイローラーはホテルの宿泊代がタダになるが、彼らが客室で眠ることはほとんどない。みんなずっとカジノにいる。
私はいくつかのカジノでVIPルームを視察したが、ソファで寝ている中国人客が少なくなかった。彼らはゲームの合間にわずかな仮眠をとり、みんな24時間後には帰っていく。マカオに来る目的が余興としてのギャンブルではなく、収賄とマネーロンダリングだからである。
また、マカオでは不動産が急騰してきたが、それは中国の富裕層が帰りがけに定期預金代わりにマンションを買っていくからだと言われている。マカオのマンションは名義が誰でもいい。名義貸しをして管理まで請け負う専門業者もいる。富裕層は投資目的、あるいは将来は大陸から逃げマカオで換金して高飛びをしようと考えて買っているのだ。
※SAPIO2014年11月号