「1冊20万円、全巻揃えたら80万円という常識破りの高額にしました。加えて完全予約限定販売ですから、青少年にはまず手が出せない。そういう“自主規制”を設けて、当局から睨まれた場合でも何としてもこれを世に広めようと苦心したのです」(山本氏)
実際、同書は高額に値する内容と体裁を備えていた。原寸サイズのうえ、用紙は和紙を漉かせた特殊なもの。印刷もオリジナルの持つ美とムードを極力再現するよう7~8色を使うなど、最大限の努力がなされた。白倉氏は印刷所に泊まり込み、再三再四にわたって細かな指示を出した。
「発売告知と同時に大反響を呼びました。累計1万部の大ヒットとなりました」(山本氏)
監修者に名を連ねた小林氏の同書への評価も高い。
「後年、書店に春画関係の書籍や特集雑誌が並ぶようになったのは、間違いなく同書の功績です」
白倉氏の長女・奈保さんは、当時の父親の姿をよく覚えている。
「家にあった作業台に、春画のポジフィルムがポンと置いてあるんです。父は変に春画を隠すようなことはせず、とても自然体でした。私や母は父がポルノを扱っているという偏見を抱いたことは一度もありません」
※週刊ポスト2014年10月31日