いまや女子憧れのNo.1キーワードといえば「壁ドン」だ。かといっておっさん……いや、大人の男性が実行するにはそれこそ高い壁がある。大人力コラムニスト・石原壮一郎氏が「壁ドン」実行の作戦を伝授する。
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そろそろ中年世代のみなさんの耳にも入り始めているでしょうか。昨今、巷では「壁ドン」が話題と注目を集めています。小田急百貨店新宿店では、来春発売の企画福袋のひとつとして「壁ドン」福袋を発売すると発表。10月に期間限定で森永乳業が原宿に開いた、イケメンの人形と壁ドン体験ができる「壁ドンカフェ」も大盛況でした。
「壁ドン」とは、男性が女性を壁際に追い詰め、壁にドンと手や腕をついて女性をじっと見つめ、俺だけを見てろだの前から好きだっただの、甘い言葉を口にするというもの。もともとは少女漫画から広まったと言われています。かつては、アパートなどで隣りの部屋がうるさいときに、壁をドンドン叩いて「静かにしろ!」と抗議することを「壁ドン」と呼んでいましたが、いつの間にかそういう意味はほぼなくなりました。
ともあれ、今は若い女性もそれほど若くない女性も、四六時中「ああ、私も壁ドンされてみたい……」と夢見ています(たぶん)。大人としては、そんな状況を見逃す手はありません。「壁ドンブームを利用してモテる」――。そんな夢と野望を抱くことで自分を奮い立たせ、何かと忙しい年末を乗り切りましょう。
かといって、会社の階段の踊り場や誰もいないオフィスの中で、憎からず思っている女性社員にいきなり「壁ドン」を挑んだら、間違いなく悲鳴を上げられてたいへんなことになります。ここは大人の得意技である「根回し力」を大いに駆使したいところ。
まずは、何気ない世間話を装って「○○ちゃんは、丼物では何が好き?」と聞きます。カツ丼なり天丼なりといった答えが返ってきたら、さりげなく「壁ドンはどう?」と質問。そこで「あー、まだ食べたことないけど、憧れてるの」といったノリのいいリアクションがもらえたら、「じゃあ、今度いっしょに食べに行こう」とかぶせましょう。冗談めかしつつ、実際の「壁ドン」に向けての着実な一歩を踏み出せます。
「あはは、あれは食べられませんよ」という無難なリアクションでも、それはそれで「この人、意外と流行に敏感なのね」と一目置いてもらえそうだし、こっちが「壁ドン」を意識しているらしいという認識は持ってもらえます。
さらに翌日、またまた何気ない世間話を装って「○○ちゃんは、恐竜では何が好き?」と聞きます。プテラノドンだのイグアノドンといった答えが返ってきたら、さりげなく「壁ドンはどう?」と……以下同文。
ステゴザウルスやトリケラトプスと言われたとしても、ワンクッション置いて「じゃあ、プテラノドンや、あるいは……壁ドンは?」と言えば問題ありません。