ビジネス

ドーナツ販売セブンと白湯発売のローソン 理念の違い明確に

コンビニごとの違いも浮き彫りになってきた

 コンビニ秋の陣、始まる。コンビニ界の二大チェーンが目指す哲学とはなにか。秋の店頭商品からその哲学を食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏が読み解く。

 * * *
 いよいよイデオロギーと争点が明確になってきた。といっても、政治の話ではなく、コンビニの話だ。

 11月20日、セブン-イレブン・ジャパンが、2015年から店頭でドーナツ販売を開始する方針を明らかにした。全国1万7000店に温度管理ができる専用のケースを設置。1個100円程度で販売するという。大阪や京都などを中心に試験販売した「セブンカフェドーナツ」が好調だったことを受けての本格販売決定ということのようだ。ここ1~2年で「セブンカフェ」(ドリップコーヒー)やホットスナックなど、顧客ニーズにこたえるべくレジまわりの商品に注力してきた路線をさらに推し進めようということのようだ。

 一方、業界第二位のローソンは11月12日、アサヒと組んで「富士山のバナジウム天然水 ホット」をローソン限定で発売することを明らかにした。女性の間でブームとなっている「白湯」をニーズとして取り込もうということか。ローソンはそれ以前から、「体を冷やしたくない方に」と常温のミネラルウォーターやお茶などの棚を設けており、中期経営計画にも「健康」や「医療」などを軸に、5年で営業益を倍増させる計画を打ち出していた。小麦ふすまを使った「ブランパン」のヒットは新たな付加価値を創出し、利益率の向上につなげた好例と言えるだろう。

 両者の戦略からは目指すものの違いがくっきり見て取れる。

 セブン-イレブンは徹底して「コンビニ」であることを目指す。以前、セブン-イレブンは夏でもおでんを販売していた(現在でもお盆過ぎから販売している)。その理由を旧知の本社社員に尋ねたところ「昔、夏に販売をやめようとしたら、役員に『夏にもおでんを食べたいお客様はいるんだ!』と一喝された」ことが理由だと言っていた。目の前の客を徹底的に大切にする顧客第一主義こそがセブン-イレブンの身上であり、同社鈴木敏文会長の著書などでも「顧客」という言葉がそこかしこに登場する。

 同社の「創業の理念」は「既存中小小売店の近代化と活性化」「共存共栄」であるという。前者は町のタバコ屋のコンビニ化、後者は他業態や近隣に住まう人との関係性をあらわしたものだろうか。顧客ニーズをすくいとる”受信型”の企業と言えるのかもしれない。

関連記事

トピックス

伊藤沙莉は商店街でも顔を知られた人物だったという(写真/AFP=時事)
【芸歴20年で掴んだ朝ドラ主演】伊藤沙莉、不遇のバイト時代に都内商店街で見せていた“苦悩の表情”と、そこで覚えた“大人の味”
週刊ポスト
総理といえど有力な対立候補が立てば大きく票を減らしそうな状況(時事通信フォト)
【闇パーティー疑惑に説明ゼロ】岸田文雄・首相、選挙地盤は強固でも“有力対立候補が立てば大きく票を減らしそう”な状況
週刊ポスト
新アルバム発売の倖田來未 “進化した歌声”と“脱がないセクシー”で魅せる新しい自分
新アルバム発売の倖田來未 “進化した歌声”と“脱がないセクシー”で魅せる新しい自分
女性セブン
大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
中国「抗日作品」多数出演の井上朋子さん
中国「抗日作品」多数出演の日本人女優・井上朋子さん告白 現地の芸能界は「強烈な縁故社会」女優が事務所社長に露骨な誘いも
NEWSポストセブン
国が認めた初めての“女ヤクザ”西村まこさん
犬の糞を焼きそばパンに…悪魔の子と呼ばれた少女時代 裏社会史上初の女暴力団員が350万円で売りつけた女性の末路【ヤクザ博士インタビュー】
NEWSポストセブン
(左から)中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏による名物座談会
【江本孟紀×中畑清×達川光男 順位予想やり直し座談会】「サトテル、変わってないぞ!」「筒香は巨人に欲しかった」言いたい放題の120分
週刊ポスト
大谷翔平
大谷翔平、ハワイの25億円別荘購入に心配の声多数 “お金がらみ”で繰り返される「水原容疑者の悪しき影響」
NEWSポストセブン
ホワイトのロングドレスで初めて明治神宮を参拝された(4月、東京・渋谷区。写真/JMPA)
宮内庁インスタグラムがもたらす愛子さまと悠仁さまの“分断” 「いいね」の数が人気投票化、女性天皇を巡る議論に影響も
女性セブン
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
女性セブン
伊藤
【『虎に翼』が好発進】伊藤沙莉“父が蒸発して一家離散”からの逆転 演技レッスン未経験での“初めての現場”で遺憾なく才能を発揮
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン