不意を突かれて、「え?」と戸惑う人を、こう口説いてかかる。
〈権力が最も恐れるのは、多数の民衆の意見です。多くの人々がいやだと言っている事を、多数を占めたからといって、押し通すことは権力の力を衰えさせることにつながることを彼らは知っています。〉
〈ですから、入れたい候補がいないとき、誰に入れてわからないときは棄権せず、”誰もいないよ!”と言いましょう!その思いを白票に込めて投票しましょう!〉
冷静に読めば、「思い込みか!」と突っこんで終わる内容といえよう。ただ、投票先がない人の多くは、「棄権は現政権の信任を意味するのだ」といった良識派からの教育的お説教を方々で目や耳にしている。「棄権≒卑怯≒怠惰」という世間の風当たりの強さを知っている。そこでさらにこう説得されたら、いかがだろう。
〈投票を棄権せずに、有権者が全ての候補者に対して支持する気になれないという気持ちを、白票を投じて候補者たちに伝えることで、政治にプレッシャーをかけて政治家の質を上げてゆく。そういった有権者の意思表示の仕方を市民感情の表現手段の一つに加えることは大きな意味を持ちます。〉
一票の力は小さくても、小さなキミの一票が大きな民意をつくっていく。イマジン・オール・ザ・ピープル的な草の根民主主義。みたいな話に頷きかけたことのある人なら、「そうか!白票という意思の表し方があったか!」と勘違いしてもおかしくはないと思うのだ。
まあ、みなさんお分かりのことをあえて文字にしておくと、白票は無効票扱いなので、いくらたくさん投じられてもカウントされず無意味です。より分かりやすく書いておくと、ふざけるな世の中という気持ちを「うんち!」と表現した投票用紙と、どの党も支持できないという思いをこめた白票とは、同じ枠で処理されていくだけなので、〈政治にプレッシャーをかけて政治家の質をあげてゆく〉ことはありえません。
いや、同じ無効票でも「うんち!」と書く人間は自分の行為は小学生並みにバカだと認識した上でそうするものだろうが、白票を投じる行為はそこに自己満足が伴わせてしまう。自分のバカさ加減を認識できず、正義を貫いたぐらいに思い込みかねないから「うんち!」より一段、情けない。
なので、もしも万が一、今回の選挙で白紙投票を考えている人があなたなら、しばらくの間、選挙の棄権を私は薦めたい。だって、この程度の落とし穴にひっかかる頭が支持政党を見つけたとしても、その政党はあなたの将来を幸せに導く可能性より、あなたの一票や政治参加を利用して世の中を私たちが住みづらい方へ持っていく危険性のほうが高い気がするからだ。