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経常収支4か月連続黒字 円安になって額面上そうなっただけ

 大胆な金融緩和によって円安とインフレが起きると景気がよくなる──アベノミクスが描いていたそんな青写真を、今も本気で信じる国民はいないだろう。だが、それを信じさせたいという勢力はいまだ存在し、その企みによって中小企業の苦境はあまり報じられない。

 大メディアもアベノミクスを援護するのが大好きだ。例えば読売新聞12月8日付夕刊で「経常収支(輸出や海外から受け取った配当金などから輸入などの合計を差し引いた収支)が4か月連続で黒字」と報じたが、何のことはない。円安になったから額面上そうなっただけである。

 ケイ・アセット代表でマーケットアナリストの平野憲一氏が指摘する。

「日本企業が海外子会社から得た配当金や債券の利子などを示す『第1次所得収支』が円安によって膨らんだだけで、その恩恵は海外展開する大企業にしか及ばない。原材料を輸入、加工して輸出する貿易立国の日本が貿易収支で赤字を続けている以上、苦しい状況に変わりはない」

 本当に実体経済の強さを示す貿易収支は相変わらず過去最大級の赤字をタレ流し続けている。都合のいい解釈を並べて「アベノミクスの破滅的失敗」を糊塗する報道ばかりなのだ。

 アベノ円安は外交面でもマイナスに作用している。対中強硬姿勢を見せる安倍政権だが、円安によって「中国から見下される」結果を招いたことは何よりも手痛い失敗のひとつだ。

 日中両国のGDP(国内総生産)を比べれば経済力の差は開く一方だ。日本のドル建て名目GDPは2010年に中国に逆転され、民主党政権末期の2012年時点で中国の7割強の水準だったが、安倍政権が進めた円安に伴ってこの2年間で円のドルに対する価値は約5割も下がった。

 2014年の日本のGDPは4.8兆ドルで、中国の10.4兆ドルの半分以下とその差は大きく開いている。「自国の半分以下の経済規模に転落した国」のいうことに中国が耳を貸さないのも当然だろう。

 これが安倍氏の「主張する外交」が機能しない最大の理由である。

※週刊ポスト2014年12月26日号

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