では、キリンが価格メリットを失う可能性のある第3のビールに見切りをつけるのかといえば、決してそんなことはない。来年1月には、糖質ゼロ・プリン体ゼロの「のどごしオールライト」を投入する。
「今年はサッポロビールの『極ZERO』が国税庁の指摘によって第3のビールから発泡酒へとジャンル変えし、税率の差額116億円を追加納付するなど“狙い撃ち”された。
だが、キリンは敢えて健康志向に配慮した付加価値の高い第3のビールを出し続けることで、新たなビール需要を継続的に取り込もうとしている」(前出・全国紙記者)
ジャーナリストの永井氏も、第3のビールは生き残りが可能だと話す。
「税率が変わって各ジャンルの価格差が縮まれば、ビールを選ぶ基準は市場が拡大傾向にあるプレミアムビールか、徹底した健康訴求型のビール類かの二極化がより鮮明になってくる。第3のビールは税率アップ分の付加価値をどれだけ示せるかにかかっています」
そもそも、存在感を増していた発泡酒が2003年の増税を機に需要が一気に落ち込んだように、消費行動の流れを止める税率見直しが本当に必要なのか――。
「4月の消費増税で我が家の晩酌を発泡酒から第3のビールに変えたばかり。安い割にはビールのように飲み応えもあると思っていたのに、値段が上がるとなればチューハイなどで我慢するしかないかと思っています。庶民のささやかな楽しみを奪う増税は断固反対です」(50代サラリーマン)
円安の弊害によって食品の値上げが相次いで発表される中、これ以上家計を圧迫する酒税改正は、ビール離れに一層拍車をかけかねない。