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各種値上げで容認される牛丼、叩かれる電気料金 家計防衛策

政府・日銀は円安、金融緩和の方針で、インフレ容認方向に舵をますます切っている。となれば、当然原材料の調達費用の高騰などもあり、様々なモノの価格が上がる(上がった)。吉野家は300円だった牛丼並盛を12月17日、380円に変更した。

380円になった当日、15時に値上げを開始したが、その直前の昼の時間は各店舗で行列ができるほど。そして、実際に値上げをした前後、ツイッターでは怨嗟の声が多数出るのかと思いきや、理解を示す声が案外目立つ結果となった。

「吉野家も2時間後には値上げかぁ。 まぁ原価高騰してたらしょうがないし、無理に価格維持しようと無理すればどこかに歪みが来るし値上げは妥当かな」

「吉牛の肉はアメリカ産。物価が上がってる+円安なんだから値上げは必然。昔は並で400円だったんだぞ。それを理解せずに不満を漏らしてる人はクソ」

「15年前400円で今380円ですけど・・・デフレで安すぎただけか」

他にも、即席麺、アイスクリーム、冷凍食品、惣菜類などありとあらゆるものの価格が上がることになっているが、消費者の間には諦めムードができている。週刊ポスト12月26日号では、即席麺は日清食品が250品目を5~8%、アイスクリームはロッテアイスが34品目を10~40円、中華総菜を紀文食品が5~15%上がることなど31項目を、“2015年に家計を直撃する「値上げ品目リスト」”としてまとめている。ほかにも、日清オイリオが2015年3月2日以降に小売店に納入するオリーブオイルが30~50%値上がりすることを発表し、大王製紙も2015年1月21日出荷分から、トイレットペーパー等すべての家庭紙製品を10%以上値上げすると発表した。

今回の値上げに対しては、諦めムードが漂うものの、値上げされると強い反発を受けるものが電気料金だ。メディアはこうした電気代の上昇を「か弱い消費者いじめ」との論調で報じ、町工場などが蛍光灯を切ったりエアコンを止める様子など、節電をしている様子を取材し、窮状を伝える。

経済学者の池田信夫氏は2012年に執筆したニューズウィークのコラムにてこう述べている。
〈「電力会社が悪いから値上げは認めない」と主張するのはご都合主義である。こういうわがままは、55年体制で社会党が「増税には反対だが福祉は充実しろ」と主張したのと同じだ〉

福島原発事故以来、様々な電力会社が「悪」の構図に巻き込まれている。こうした動きについてはネットでも時々発生するが、通常の企業は「企業努力ではもはややっていけない……」という値上げの理由が納得されるものの、こと電気となると、反発の炎が巻き上がる。

この状況について、ネット上のコミュニケーションに詳しい編集者の中川淳一郎氏は語る。

「原発については、ネットではもはや触れられない『聖域』のようなものになっています。これについて意見すると反対派・賛成派両派が入り乱れての大論争となります。そして、脱原発派の方が一致団結する傾向があるので、『値上げが嫌なら、再稼働も仕方ないんじゃないの?』みたいなことを言う側が委縮する。

よって、電気料金の値上げや、原発再稼働については、ヤフー知恵袋のような匿名の場所で反対派に対して疑義を呈す程度。ヤフー知恵袋には、『原発も反対、電気値上げも反対って言う人って、おかしい!!と思いませんか?』といった意見が書き込まれますが、案の定批判が殺到するワケですよ。『関係者乙』なんて言われてね(笑)。ネットでは、子育て・妊娠関連話題と電力関連の話題についてはもはやタブーとなっていますし、とりあえず電気料金の値上げに反対しておけば、『いい人』扱いとなる。

とある飲食店チェーンの社長が『電気料金が値上げになるから人件費を減らす』的なことを言い、同情されました。多分、『仕入れる肉の価格が上がったから人件費を減らす』なんて書いたら『従業員が可哀想だ!』みたいな話になることでしょう」

こうした「電力値上げ」が聖域になることについて、業界関係者はどう考えているのか。とある男性が声をひそめて言う。

「原発を止めていても普通に暮らしていけるから実感されてないのかもしれませんが……。原発ゼロで、火力発電にシフトして高い燃料を海外から買い続ければ、いくら給料を減らしたり、経営合理化をしても正直焼け石に水といいますか……。もちろん安全への高い基準をクリアし、住民の合意が大前提ですが、原発を動かさないということは、結局値上げとして消費者に跳ね返ってしまうんですよね。これは避けられない現実なので悩ましいところです」

値上げに対しては、一般企業も産業の根幹となるエネルギー会社も最終の選択肢として頭を抱える課題だが、各種値上げへの対策、そして電気代が上がった場合の節電はどのようにすればいいのか。節約アドバイザーの丸山晴美さんに聞いた。

丸山さんは、吉野家の牛丼についてはクックパッドの「吉野家の再現レシピ」を参考にしてみては、と提案する。

「完全に再現するのは難しいでしょうが、夜のスーパーで牛のバラ肉が半額とかになっていれば、その時に牛肉を買う。玉葱、醤油、みりん、ダシの元、料理酒などで吉野家の牛丼をある程度再現できるそうですよ。完全な『再現』ではなく『吉野家風』なものは作れます」

また、パスタや即席麺の値上がりについては、原料の小麦が海外依存であり、産地の収穫量や為替に影響されるが故の価格の不安定さについて言及。

「生活防衛のための基本はお米となります。お米は値上がりしにくい食材です。しかも、今年は米の価格が下落しており、他の食材と比べても割安感のある食材となっています」

と国内自給率がほぼ100%の米食を勧めている。

さらには、かなりのモノの価格が上がっていることを受け、「これまでと同様の生活をしていると、間違いなく生活費が足りなくなるはずなので、生活のあらゆるところで見直しをして、替える必要があります。これを私は『替え活』と呼んでいます」とし、例えばMサイズで270円のホットコーヒーを出すカフェチェーンに行くのではなく、同じくらいの量でありながら150円で飲めるセブンイレブンを活用したり、ナショナルブランド商品をPB(プライベートブランド)に切り替えるなどの「替え活」を提案した。

節電については、ウォームビズを心がけることに加え、暖める場所の体積を少なくするためにエアコンを使う場合はドアを閉める、体積を大幅に減らすべくコタツを活用することが有効だと指摘した。

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