セ界を独走する藤川阪神だが…
セ界で向かうところ敵なしの独走態勢を築いている藤川阪神。投手陣は盤石で、打線も各打者が求められた役割を果たしているように見える。気の早い虎党は、リーグ優勝はもちろんのこと、2年ぶりの日本一へと期待を膨らませているようだが、阪神の大物OBたちはその道のりは決して平坦ではないと釘を刺す。この先には、まだまだ高い障壁も残っているのだ──。
セの5球団が弱すぎる
タイガースが最高の形で前半戦を終えようとしている。2位に大差をつけ、セの貯金は“独占状態”に。チーム防御率は驚異の1点台を記録しており、7月中のマジック点灯まで現実味を帯びている。このペースで勝ち星を重ねれば、セでは巨人のV9がスタートした1965年以来となる「シーズン90勝超え」さえ見えてくる状況だ。
辛口評論で知られる阪神OBの江本孟紀氏も、「よほど大量の故障者が出ない限り、リーグ優勝は間違いないでしょうね」と語る。
「他の5球団ができていない“ごく普通の野球”を阪神だけができている。先発が長いイニングを投げて、中継ぎ、抑えが仕事をする。先発陣はデュプランティエ(31)が急に活躍したり、才木(浩人、26)の調子が落ちたら伊藤将司(29)が復活と、うまく回っている。
打つほうも1番・近本(光司、30)と2番・中野(拓夢、29)の出塁率が高くて、クリーンナップが代わる代わる得点につなげる。藤川球児監督(44)はベンチワークというより、勝っても負けても大騒ぎせずに慌てずにいることでチームを落ち着かせています」
チーム防御率のみならず、チーム打率や盗塁数もリーグ1位で、佐藤輝明(26)と森下翔太(24)が本塁打・打点でリーグの2トップ。打球が頭部に直撃して離脱していた防御率0点台のリリーフ・石井大智(27)も戻ってきて、セでは他の追随を許さない強さを見せている。
だが、2年ぶりとなる日本一を見据えるうえでは、向き合わなくてはならない問題がある。「パの球団に勝てるのか」という点だ。
つい先月のパ6球団との交流戦では悪夢のような7連敗があり、8勝10敗の8位。セの他球団も広島の勝率5割がトップという散々な成績だったためにセ首位をキープして交流戦を終えられたが、これではリーグ制覇はできても“日本シリーズではパの勝者にいいようにやられるのでは”との懸念が拭えない。
「たしかに、セは阪神が強いというより、他が弱すぎるわな」
そう話すのは、生え抜きとして初の2000本安打を記録した元阪神監督の藤田平氏だ。
「交流戦で勝てなかったのは、単純に投打のレベルがパのほうが上ということ。パは巨大戦力のソフトバンクに勝つために他の5球団も実力が底上げされてきた。投手陣は球に力があるし、攻撃は機動力と長打力に優れている。
阪神が交流戦でダメだったのは湯浅(京己、26)や岩崎(優、34)の継投で藤川監督が失敗したからと言われているけど、パのバッターを褒めるべきでしょう。いくら投高打低の時代とはいえ、セは首位打者の中野がやっと3割。対するパには3割バッターが4人も5人もいる。投手陣だって150キロ以上の豪腕はパのほうが多い」