中国の朱鎔基・元首相が慈善団体に寄付した金額が昨年1年間で2398万元(約4億5600万円)にも達し、中国の慈善家ベスト10に入っていたことが分かった。10人中、実業家でないのは朱氏ら3人だけ。朱氏は著書の印税をすべて寄付しており、「一銭たりとも自分のためには残さない」と宣言し、これまでの寄付金は4000万元(約7億6000万円)にも上っている。
ネット上では朱氏を讃える書き込みが圧倒的に多いが、同じく首相を務めながら、親族がファミリービジネスに精を出しているとされる李鵬、温家宝両氏の首相経験者を揶揄する声もでている。
朱氏はこれまで6冊の著書を出版しており、最初の本は2009年8月に発売された『鎔基、記者の質問に答える』とのタイトルで、すでに5刷りで、累計100万部以上のベストセラーとなっている。価格は59元(約1100円)。
このほか、『朱鎔基講話実録』(全4巻)と『朱鎔基上海講話実録』も100万部を超すベストセラーだ。これらの本の特徴は、記者会見や重要講話など、朱氏が実際に語った内容がほとんどで、歯に衣を着せずに朱氏が現場で感じた本音が行間にじみ出ていること。
朱氏の飾らないその人柄には現役時代から多くの支持者がいたが、引退したいまも支持者であり続けている人が多いのも特徴だ。
朱氏が寄付をしているのは「実事助学基金会」。朱氏は基金会の理事長と親しく、朱氏が出版社に著作の印税はすべて同基金会の口座に振り込むように指示しているという。
朱氏は日頃から「自分一人ではできることに限りがある。教育を受けた子供たちが大人になれば、彼らが多くのことを成し遂げてくれる」というのが口癖だという。
同基金会は湖南省の農村部の貧しい家庭の児童700人に教育資金を提供するなどの実績があり、今後も子供たちの教育を普及するための活動を続けていくことにしている。
このような朱氏の行動にネット上では「すでに引退しているにもかかわらず、一人の共産党員として本分を忘れずに人々に尽くそうとする心意気は立派だ。永遠に偉大なる総理だ」と絶賛することが30以上も寄せられている。
その一方で、「朱総理の行動を貪官汚吏に見せてやりたい。そういえば、同じ首相経験者である李鵬首相や温家宝首相はどうなっているのだろうか」との書き込みも出ている。李氏や温氏は首相在任中から、その親族によるファミリービジネスの噂があとを絶たず、公職を利用して、莫大な隠し資産を形成したと伝えられており、朱氏と比較して、間接的に両氏を批判する声が高まっている。