「(安倍首相とは異なり)福田赳夫、中曽根康弘、福田康夫といった歴代首相は中国との良好な関係を築き、それを維持していくための重要な方向づけをしてきました」
その言葉は手厳しいが日本社会、そして日本人への期待の裏返しともいえよう。ボーゲル氏は同書で日本経済だけに着目したわけではなかった。
〈過剰な人口を抱えた日本が、経済、教育、保健、治安などの各方面に成果をおさめていることは他の国の追随を許さない〉。
さらに、その要因を外国人研究者にありがちな日本人の伝統的国民性にみるのではなく、日本独特の組織力や長期的視座にたった計画・政策に求めた。そうした組織力の再構築やビジョンの見直しこそ現代の日本に再び求められるのではないか。
「日本は、これまでに市民が高い生活水準をエンジョイしつつ、長生き出来る高学歴社会を創造することに成功しました。それだけに日本はその国民が生きがいを持って生きる質の高いクオリティ・オブ・ライフを享受できる平和的な政策を追求できると信じています。そうした中で日本国民は、教育や技術、さらには全人類的公益の追求といったグローバルな分野でも活躍することを期待しています」
この言葉をわれわれ日本人はどう受け止めるべきか。
※SAPIO2015年2月号