ライフ

「もって生まれたもの」がない人の文章上達に役立つ名著紹介

 作家・村上春樹氏のネットでの文章問答が話題になっている。大学院生の「どうやったら文章が上手くなるか」という質問に、「基本的にはもって生まれたもの」という回答に、「厳しい」「身も蓋もない」とネットユーザーが上がった。どうやれば文章が上手くなるのか。フリーライター・神田憲行氏も考える。

 * * *
 話題になったサイトは新潮社が運営する「村上さんのところ」。読者からのさまざまな質問に村上春樹氏が回答するという趣向で、くだんの質問と回答は今月16日にアップされた。大学院に通う女子学生からの「レポートや教授へのメールなどたくさん文章を書く立場だが、文章を書くのが苦手で、どうにか文章を書きやすくなりませんか」という趣旨の質問に対して、村上氏が

《文章を書くというのは、女の人を口説くのと一緒で、ある程度は練習でうまくなりますが》

 と前置きしつつ、

《基本的にはもって生まれたもので決まります》

 とはっきり言い切り、最後に、

《まあ、とにかくがんばってください》

 と結んだ。最後の「まあ」という部分が突き放した印象があるのが、ネットでは「厳しい!」という感想を持つ人も多いようだ。しかし逆にいうと、村上春樹が「誰でも練習すれば僕ほど上手くなりますよ」と言う方が大嘘になると思うのだが。また、練習でうまくなった程度の「ある程度」の文章力で、大方の人は(小説で身を立てようという人以外は)、事足りると思う。それにしにても大学のレポートの相談をノーベル賞クラスの作家に相談できるのだから、いい時代になったものである。

 もっと知りたいのは「練習」の中味だ。なにをどうやればいいのだろう。「女の人を口説くのと一緒」とあるから、女性(読者)の気持ちを考えて、トライ&エラーを繰り返せ、ということなのだろうか。

 文章が上達するためには、たくさん読んでたくさん書け、というのは昔から言われていることである。その経験値が「もって生まれたもの」がない普通の人には必要だ。

 だが書く経験は社会人になっても積むことはできるが、読むこと、とくに「読み方」について学校を卒業した後に修練を重ねることは難しい。そこで今月出た本をお勧めする。

 「やりなおし高校国語–教科書で論理力・読解力を鍛える」(出口汪著・ちくま新書)だ。

 出口氏について「カリスマ国語教師」程度の認識しかなかった私がこの本を手に取ったのは、丸山眞男の名論文「『である』ことと『する』こと」が教材に上げられていたからである。学生時代に感銘を受けたこの文章をもう一度、きちんと読み直してみたい欲求に駆られた。

関連キーワード

関連記事

トピックス

イギリス出身のボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
《ビザ取り消し騒動も》イギリス出身の金髪美女インフルエンサー(26)が次に狙うオーストラリアでの“最もクレイジーな乱倫パーティー”
NEWSポストセブン
将棋界で「中年の星」と呼ばれた棋士・青野照市九段
「その日一日負けが込んでも、最後の一局は必ず勝て」将棋の世界で50年生きた“中年の星”青野照市九段が語る「負け続けない人の思考法」
NEWSポストセブン
東京都慰霊堂を初めて訪問された天皇皇后両陛下と長女・愛子さま(2025年10月23日、撮影/JMPA)
《母娘の追悼ファッション》皇后雅子さまは“縦ライン”を意識したコーデ、愛子さまは丸みのあるアイテムでフェミニンに
NEWSポストセブン
2023年に結婚を発表したきゃりーぱみゅぱみゅと葉山奨之
「傍聴席にピンク髪に“だる着”姿で現れて…」きゃりーぱみゅぱみゅ(32)が法廷で見せていた“ファッションモンスター”としての気遣い
NEWSポストセブン
「鳥型サブレー大図鑑」というWebサイトで発信を続ける高橋和也さん
【集めた数は3468種類】全国から「鳥型のサブレー」だけを集める男性が明かした収集のきっかけとなった“一枚”
NEWSポストセブン
女優の趣里とBE:FIRSTのメンバーRYOKI(右/インスタグラムより)
《趣里が待つ自宅に帰れない…》三山凌輝が「ネトフリ」出演で超大物らと長期ロケ「なぜこんなにいい役を?」の声も温かい眼差しで見守る水谷豊
NEWSポストセブン
活動休止状態が続いている米倉涼子
《自己肯定感が低いタイプ》米倉涼子、周囲が案じていた“イメージと異なる素顔”…「自分を追い込みすぎてしまう」
NEWSポストセブン
松田聖子のモノマネ第一人者・Seiko
《ステージ4の大腸がんで余命3か月宣告》松田聖子のものまねタレント・Seikoが明かした“がん治療の苦しみ”と“生きる希望” 感激した本家からの「言葉」
NEWSポストセブン
“ムッシュ”こと坂井宏行さんにインタビュー(時事通信フォト)
《僕が店を辞めたいわけじゃない》『料理の鉄人』フレンチの坂井宏行が明かした人気レストラン「ラ・ロシェル南青山」の閉店理由、12月末に26年の歴史に幕
NEWSポストセブン
ナイフで切りつけられて亡くなったウクライナ出身の女性イリーナ・ザルツカさん(Instagramより)
《19年ぶりに“死刑復活”の兆し》「突然ナイフを取り出し、背後から喉元を複数回刺した」米・戦火から逃れたウクライナ女性(23)刺殺事件、トランプ大統領が極刑求める
NEWSポストセブン
『酒のツマミになる話』に出演する大悟(時事通信フォト)
『酒のツマミになる話』が急遽差し替え、千鳥・大悟の“ハロウィンコスプレ”にフジ幹部が「局の事情を鑑みて…」《放送直前に混乱》
NEWSポストセブン
『週刊文春』によって密会が報じられた、バレーボール男子日本代表・高橋藍と人気セクシー女優・河北彩伽(左/時事通信フォト、右/インスタグラムより)
「近いところから話が漏れたんじゃ…」バレー男子・高橋藍「本命交際」報道で本人が気にする“ほかの女性”との密会写真
NEWSポストセブン