櫻井:実現していたらホスト国の首脳として習近平主席の面子は丸つぶれでしたね。
中西:そうなんです。近年の対中外交でこれほど戦略性に富んだ成功例はなかったと思います。中国にとって日本はアジアで唯一言いなりにならない、まつろわぬ国です。歴史を振り返ると韓国をはじめ多くの国は朝貢し、つねに中国の属国という立場を取りました。ただし日本だけは中国の権威を認めませんでした。
遡れば中国の正史『隋書倭国伝』には、あくまで中国との対等を主張する聖徳太子の国書に対し、煬帝が不快感を示したと書いています。おまけにその後、煬帝は隋の高官を使節として倭国に送りました。完全な対等外交を中国に認めさせたわけです。私には習近平主席と安倍首相のツーショットが、煬帝と聖徳太子に重なりました。
とはいえこれまでつねに中国に譲歩を重ねてきた日本が安倍晋三という得難い首相をえて一時的に外交勝利を手にできたに過ぎません。また今回は露骨な軍事力の脅しだったから、日本はむしろ対応が容易でした。
しかし今後の第二ラウンドは、日本が何度もやりこめられた情報や謀略による対日工作との闘いになります。中国は、永田町、経済界、メディアなど日本の中枢に数多くいる親中派を利用した工作を仕掛けてくるでしょう。
※SAPIO2015年3月号