デブ菌の正体はまだはっきりとはわかっていないが、その存在はこれまでの研究でも示唆されていた。2013年9月に発表されたワシントン大学のゴードン博士らによる実験結果だ。
まず、遺伝的に同一のマウスを無菌環境で育て、体内に細菌がない状態にする。そこに、片方が肥満、片方がやせている双子女性4組から採取した腸内細菌を移植した。
すると同じエサを同量与えられたにもかかわらず太った女性から細菌を移されたマウスのほうが有意に体重が重く、体脂肪率も高くなったのである。
2月に発表された研究で「デブ菌」の存在がさらに濃厚になり、しかも感染症の治療でヒトからヒトへと“伝染”し得ることも明らかになったわけだ。理化学研究所特別招聘研究員で「うんち博士」としても知られる辨野義己氏はこう語る。
「一連の研究結果から、『デブ菌』が肥満の一因となると考えていいでしょう。肥満は遺伝するといわれ、ある種の遺伝子が内臓脂肪や皮下脂肪のつきやすさと強く関連することが判明していますが、腸内細菌も親から子へ取り入れられることが多いため、肥満体質の遺伝に関連があるといえます。
ただし、どの菌がどういう働きをしたのかは未解明です。腸内細菌の研究が本格化したのは今世紀に入ってからで、1000種類以上あるといわれる腸内細菌のうち、7割はまだ特定されていません。今後の研究が待たれます」
※週刊ポスト2015年3月6日号