この調査では、健康な人のLDL値の基準範囲は60代前半の男性で72~183mg/dlとなった。人間ドック学会が昨年4月に発表し「血圧147は健康」として話題になった150万人のデータに基づく新基準範囲でも、健康な人のLDL値の上限は178mg/dl(30歳以上男性)となり、大櫛グループの調査結果と極めて近い数値を示した。
“権威ある学会”の基準値だけが飛び抜けて厳しいのはなぜなのか。大櫛氏が語る。
「動脈硬化を起こした血管にコレステロールが付着していることが発見されたのは19世紀のことです。それ以降、動脈硬化の原因だと考えられてきた。しかし、近年の研究によって実際には動脈硬化による炎症で傷ついた血管を修復するためにLDLコレステロールが集まってくるということがわかった。火事でたとえると、『現場に消防車があるから、火をつけたのは消防車だ』と勘違いされたようなものです。
コレステロールは体内に60兆個ある細胞の膜を構成する必須成分であり、また、体内の炎症を抑える副腎皮質ホルモンの材料でもある。減ると炎症が発症しやすく、また長引いて悪化することになります」
コレステロールを低下させる医療行為は、かえって健康を損ないかねないのだ。
※週刊ポスト2015年3月20日号