ビジネス

森永卓郎氏 日銀方針転換で「2015年度の日本経済に光明」

 アベノミクスがスタートして以降、日銀の金融政策は一貫して「2%の物価上昇」を目標としていた。しかし、今年に入ってから黒田東彦総裁は、その方針を転換するかのような発言をしている。これは日本経済にどんな影響を与えるのか、経済アナリストの森永卓郎氏が解説する。

 * * *
 日銀の黒田東彦総裁は、今年の年頭まで一貫して、「どんなことがあっても2%の物価上昇目標は変えない。あらゆる手段を講じて2%に持っていく」と、2015年度中の達成を断言していました。

 ところが、1月21日の金融政策決定会合後の記者会見で黒田総裁は、2015年度の物価見通しを2014年10月時点の1.7%から1%に下方修正。さらに、2013年4月の異次元金融緩和の開始から「2年以内に2%実現」についても「2015年度中にとは言っていない」と語り、方針の大転換を行ないました。

 この舌の根も乾かぬうちの前言撤回により、私は2015年度の日本経済は一気に光が差してきたと考えています。

 いま、原油価格が大幅に下落している。この半年でほぼ半額にまで下がっています。日本は原油のほぼ全量を輸入しているので、原油価格の下落は日本経済にとっては明らかにプラスです。ただし、日本の物価を押し下げます。

 その影響はすでに現われていて、生鮮食料品を除く消費者物価指数の対前年同月比の伸び率は昨年のピーク時、5月の3.4%から12月には2.5%まで着実に下がってきているのです。しかも、消費増税の影響が一巡する4月以降、消費者物価指数の対前年比上昇率は大きく下がり、限りなくゼロに近づくと見ています。

 そんな状況下で、日銀が2015年度中に2%目標を死守しようとすれば、第3次、第4次の異次元緩和に踏み出さざるを得ず、その結果として1ドル=150円程度の大幅な円安になるなど、日本経済が悲惨な事態を迎えるシナリオまで考えられました。だが、黒田・日銀の方針転換により、そうした危惧は払拭されそうです。

 私は2015年度の消費者物価上昇率はほぼ0%だと考えています。その一方で、賃金の伸び率はどうか。連合が決めた2015年春闘のベースアップ要求基準は「2%以上」です。安倍晋三総理が賃上げしろと大号令をかけ、経団連もそれを容認するといっているので、連合要求の半分は取れると見ます。つまり、プラス1%の賃上げになる。

 物価上昇率が0%で賃金が1%上がるとなれば、実質賃金は1%アップすることになる。そのため、2015年度の日本経済は明るくなると考えているのです。

※マネーポスト2015年春号

関連キーワード

関連記事

トピックス

独走でチームを優勝へと導いた阪神・藤川球児監督(時事通信フォト)
《いきなり名将》阪神・藤川球児監督の原点をたどる ベンチで平然としているのは「喜怒哀楽を出すな」という高知商時代の教えの影響か
週刊ポスト
《悠仁さま成年式》雅子さまが魅せたオールホワイトコーデ、 夜はゴールドのセットアップ 愛子さまは可愛らしいペールピンクをチョイス
《悠仁さま成年式》雅子さまが魅せたオールホワイトコーデ、 夜はゴールドのセットアップ 愛子さまは可愛らしいペールピンクをチョイス
NEWSポストセブン
LUNA SEA・真矢
と元モー娘。・石黒彩(Instagramより)
《80歳になる金婚式までがんばってほしい》脳腫瘍公表のLUNA SEA・真矢へ愛妻・元モー娘。石黒彩の願い「妻へのプレゼントにウェディングドレスで銀婚式」
NEWSポストセブン
昨年10月の総裁選で石破首相と一騎打ちとなった高市早苗氏(時事通信フォト)
「高市早苗氏という“最後の切り札”を出すか、小泉進次郎氏で“延命”するか…」フィフィ氏が分析する総裁選の“ウラの争点”【石破茂首相が辞任表明】
NEWSポストセブン
万博で身につけた”天然うるし珠イヤリング“(2025年8月23日、撮影/JMPA)
《“佳子さま売れ”のなぜ?》2990円ニット、5500円イヤリング…プチプラで華やかに見せるファッションリーダーぶり
NEWSポストセブン
次の首相の後任はどうなるのか(時事通信フォト)
《自民党総裁有力候補に党内から不安》高市早苗氏は「右過ぎて参政党と連立なんてことも言い出しかねない」、小泉進次郎氏は「中身の薄さはいかんともしがたい」の評
NEWSポストセブン
阪神の中野拓夢(時事通信フォト)
《阪神優勝の立役者》選手会長・中野拓夢を献身的に支える“3歳年上のインスタグラマー妻”が貫く「徹底した配慮」
NEWSポストセブン
朝比ライオさん
《マルチ2世家族の壮絶な実態》「母は姉の制服を切り刻み…」「包丁を手に『アンタを殺して私も死ぬ』と」京大合格も就職も母の“アップへの成果報告”に利用された
NEWSポストセブン
チームには多くの不安材料が
《大谷翔平のポストシーズンに不安材料》ドジャースで深刻な「セットアッパー&クローザー不足」、大谷をクローザーで起用するプランもあるか
週刊ポスト
ブリトニー・スピアーズ(時事通信フォト)
《ブリトニー・スピアーズの現在》“スケ感がスゴい”レオタード姿を公開…腰をくねらせ胸元をさすって踊る様子に「誰か助けてあげられないか?」とファンが心配 
NEWSポストセブン
政権の命運を握る存在に(時事通信フォト)
《岸田文雄・前首相の奸計》「加藤の乱」から学んだ倒閣運動 石破降ろしの汚れ役は旧安倍派や麻生派にやらせ、自らはキャスティングボートを握った
週刊ポスト
2013年に結婚した北島康介と音楽ユニット「girl next door」の千紗
《不倫報道で沈黙続ける北島康介》元ボーカル妻が過ごす「いつも通りの日常」SNSで垣間見えた“現在の夫婦関係”
NEWSポストセブン