スポーツ

楽天戦略アドバイザーという仕事 何するのか直接聞いてみた

山本一郎・楽天戦略アドバイザー

 アルファブロガーであり、元「切込隊長」の名前で知られる山本一郎氏が、今季、プロ野球球団楽天イーグルスの戦略アドバイザーに就任した。その経緯と仕事の中味はなにか。3月中旬、まだ冷え込みがきついスタジアムでオープン戦を観戦しながら、フリーライター・神田憲行氏がインタビューした。

 * * *
神田憲行:山本戦略アドバイザーw、今日はお忙しい中ありがとうございます。

山本一郎:いえいえ。昨日、仙台から帰ってきました。

神田:山本アドバイザーw、今季の楽天はどうですか。

山本:さっきからなんでいちいち「アドバイザー」て付けるんですか、しかもちょっと半笑いじゃないですか。そういうことを言うと、神田さんのことを「あの」ベストセラー作家の神田様って言いますよ。

神田:失礼しました。山本さんとはこれまで何度か野球観戦をご一緒させていただいたので、プロ野球好きなのは知っていました。しかしこれまでのお仕事は投資家であり、会社の経営で、野球の仕事とは唐突で驚きました。

山本:今回は楽天さんが公式に発表されたので唐突な印象があると思いますが、以前からデータ分析の仕事をしていたんですよ。私はなんでもモノゴトを「数値化」して見るのが好きで、投資はもちろん、野球も選手の能力を「数値化」するところから始まる。そこから、今までとは違った選手の能力が浮き彫りになったり、野球の仕組みみたいなのがわかるんですね。

神田:前から一緒に観戦していたときに思っていたんですが、山本さんは「この打者は初球から振った方が出塁率が何ポイント上がる」とか、セイバーメトリクス的なデータが非常に詳しい。一方で、データの傾向が現実に出てくるのを確認しているだけのような、スポーツらしい醍醐味の楽しみ方とはちょっと違うんじゃないか、みたいな気も正直していたんです。

山本:逆に神田さんは「この選手は女癖が悪い」みたいな、目の前のプレーと一切関係ない話しかしないじゃないですか(笑)。私はこのグラウンドの裏で「数値」や「数字」がどのようにやりとりされて、勝敗に絡んでくるのか、そこに興味があるんです。

神田:「数値」「数字」はこの世界の構造を知る切り口、みたいなことでしょうか。

山本:逆に言うと「数字で出ない感覚的なもの」は人によって言うことが違うし、信用できないんじゃないかと思ってます。

神田:具体的に選手の能力をデータ化するとは、どういうことなんでしょうか。

山本:投手なら、変化球なのか直球なのかを判別して、球を投げるリリースポイント、そのボールの「着弾点のばらつき」(捕手のミットに収まった場所)、回転数、球速などを計測して視覚化します。例えば直球は球にバックスピンを掛けますから、回転数が高ければボールが打者の手元でいわゆる「伸びる」球になる。回転数が低いと、打者の手元で俗に「垂れる」球になる。

神田:それで「垂れる」球の投手を、「伸びる」投手に鍛え直すという……。

山本:それが今までの野球界の考え方。「もっと球にスピンかけなくちゃダメだ」みたいなコーチの指示で無理なフォームに変えさせられたり、登板機会が減らされる。でもデータ分析の世界では《「垂れる」球イコール悪い球》とは、必ずしも言い切れないんです。球が垂れるということは、バットの下に当たることが多いので、ゴロアウトが取りやすくなる。そこで「球のばらつき」のデータを見てストライクを取るコースの分布が広ければ、その投手は打者からすると球が絞りづらいとわかる。そういう投手はストレートの質が平凡でも、中継ぎで1イニング、2イニングなら良い働きをしてくれそう、とわかるわけです。

神田:なるほど!データでその選手の「知られざる魅力」みたいなのが発掘できるんですね。

山本:そうそう。データというと査定のニュアンスから選手にダメだしする道具みたいな印象を持たれるんですが、そうじゃなくて、あくまで「どうしたらこの選手にもっと活躍してもらえるか」「どうすれば育つか」を考える材料なんです。私の仕事はあくまで選手とチームのサポートですから。

関連キーワード

関連記事

トピックス

『東京2025世界陸上』でスペシャルアンバサダーを務める織田裕二
《テレビ関係者が熱視線》『世界陸上』再登板で変わる織田裕二、バラエティで見せる“嘘がないリアクション” 『踊る』続編も控え、再注目の存在に 
NEWSポストセブン
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
【七代目山口組へのカウントダウン】司忍組長、竹内照明若頭が夏休み返上…頻発する「臨時人事異動」 関係者が気を揉む「弘道会独占体制」への懸念
NEWSポストセブン
カザフスタン初の関取、前頭八・金峰山(左/時事通信フォト)
大の里「横綱初優勝」を阻む外国人力士包囲網 ウクライナ、カザフスタン、モンゴル…9月場所を盛り上げる注目力士たち10人の素顔
週刊ポスト
不老不死について熱く語っていたというプーチン大統領(GettyImages)
《中国の軍事パレードで“不老不死談義”》ロシアと北朝鮮で過去に行われていた“不老不死研究”の信じがたい中身
女性セブン
会話をしながら歩く小室さん夫妻(2025年5月)
《ベビーカーショットの初孫に初コメント》小室圭さんは「あなたにふさわしい人」…秋篠宮妃紀子さまが”木香薔薇”に隠した眞子さんへのメッセージ 圭さんは「あなたにふさわしい人」
NEWSポストセブン
59歳の誕生日を迎えた紀子さま(2025年9月11日、撮影/黒石あみ)
《娘の渡米から約4年》紀子さま 59歳の誕生日文書で綴った眞子さんとまだ会えぬ孫への思い「どのような名前で呼んでもらおうかしら」「よいタイミングで日本を訪れてくれたら」
NEWSポストセブン
試練を迎えた大谷翔平と真美子夫人 (写真/共同通信社)
《大谷翔平、結婚2年目の試練》信頼する代理人が提訴され強いショックを受けた真美子さん 育児に戸惑いチームの夫人会も不参加で孤独感 
女性セブン
海外から違法サプリメントを持ち込んだ疑いにかけられている新浪剛史氏(時事通信フォト)
《新浪剛史氏は潔白を主張》 “違法サプリ”送った「知人女性」の素性「国民的女優も通うマッサージ店を経営」「水素水コラムを40回近く連載」 警察は捜査を継続中
NEWSポストセブン
ヒロイン・のぶ(今田美桜)の妹・蘭子を演じる河合優実(時事通信フォト)
『あんぱん』蘭子を演じる河合優実が放つ“凄まじい色気” 「生々しく、圧倒された」と共演者も惹き込まれる〈いよいよクライマックス〉
週刊ポスト
石橋貴明の現在(2025年8月)
《ホッソリ姿の現在》石橋貴明(63)が前向きにがん闘病…『細かすぎて』放送見送りのウラで周囲が感じた“復帰意欲”
NEWSポストセブン
ヘアメイク女性と同棲が報じられた坂口健太郎と、親密な関係性だったという永野芽郁
「ずっと覚えているんだろうなって…」坂口健太郎と熱愛発覚の永野芽郁、かつて匂わせていた“ゼロ距離”ムーブ
NEWSポストセブン
新潟県小千谷市を訪問された愛子さま(2025年9月8日、撮影/JMPA) 
《初めての新潟でスマイル》愛子さま、新潟県中越地震の被災地を訪問 癒やしの笑顔で住民と交流、熱心に防災を学ぶお姿も 
女性セブン