神田:打者だとどんな感じになるんですか。
山本:打者は相手投手との兼ね合いや守備もあるので、「変数」が多く、投手に比べてデータの評価は複雑になります。たとえば「1打席当たり投手にどれだけ球数を投げさせるか」という「P/PA」という指標があるんですが、相手投手のスタミナに問題がありそうなら、そういう選手を上位に起用してたくさん投げさせるということも考えられます。
神田:そのデータ見せてもらえませんか。
山本:見せられるわけねぇだろ。
神田:ア、ハイ。そういうデータ資料は監督やコーチの実際の指揮に役立ててもらうわけですね。
山本:それだけじゃなくて、若い選手の場合は特徴を見てトレーニングメニューの具体的なところまで落とし込んでいきます。球団に育成部が新設されて、3年ぐらいかけてしっかりとした育成テーマと組織作りをしようとしていまして、その手助けをするのがデータ計測や分析というわけです。
神田:今年から就任した大久保監督は山本さんのお仕事にどんな反応されていますか。
山本:熱心で頭の良い方なんだなと思いました。わからないところは細かい点まで質問されるし、たぶん帰宅してから「復習」されているのか、翌日にまた違った角度から質問をしてこられます。
神田:さっき「回転数を計測」とおっしゃいましたけれど、具体的にどうやって計測するんです? ビデオで撮ってスロー再生して縫い目が回るのをひとつひとつ数えるんですか。
山本:もちろんスロー再生を画像診断ソフトで解析したり、日々の練習の中で撮影をしてフォームチェックを兼ねて測定しています。
神田:そういう機械まですでにあるんですねえ。山本さんみたいな立場の人は全球団にいるんですか。
山本:全部かはわかりませんが、パリーグは熱心ですね。ただ私のような人間をポツンと一人二人雇ってもしょうがないわけで、さっきの回転数を計る画像診断ソフトや統計ツールとか、設備投資がある程度必要になってきます。どこのチームもやりたいでしょうが、その投資に踏み切れるかで分かれると思います。
神田:最後に、戦略アドバイザーとして今年の楽天で期待したい選手を挙げて下さい。
山本:まだあまり実績の無い選手中心でいうと、投手なら横山貴明、森雄大、今野龍太、野手なら中川大志、阿部俊人、三好匠。育成にいる柿沢貴裕、八百板卓丸の身体能力は素晴らしいですね。
神田:球界全体ではどうですか。
山本:パリーグの投手なら、もう当たり前なんですが、オリックスの金子千尋はデータ的にも素晴らしい。なかなか絞りきれず打てないですね。セリーグだとメジャーから復帰した広島カープの黒田博樹も案の定いい。まだ短いイニングしか投げていないのでサンプル数が不足しているのですが、この投球が80球でも続くとなると、大変な活躍をしそうです。
神田:それは楽しみですね。今日はありがとうございました。
山本:ていうかこの話なら、わざわざ寒い球場でしなくてもよくない?