国内

作曲家・千住明が案内する国立新美術館「ルーヴル美術館展」

 世界中から集められた30万点を超える多様なコレクション。常時展示数は約2万6000点。すべての作品を見ようと思ったら一週間はかかるといわれる世界最大級の美術館、ルーヴルから、厳選された83点の風俗画が、東京・六本木の国立新美術館にやって来た。作曲家・千住明さんが、館内をぐるり。見どころを解説する。

 * * *
 16世紀イタリア・ヴェネツィア派を主導した、ティツィアーノの『鏡の前の女』。光の画家と呼ばれるレンブラントが描いた『聖家族』、または『指物師の家族』…それぞれの時代を映した絵は、アーティストたちの生き様を感じさせてくれます。中でも、17世紀オランダを代表するフェルメールの傑作『天文学者』は、ほとんどルーヴルを離れることのない作品のひとつで、強烈なオーラを放っていました。

 でも、しかし。この『ルーヴル美術館展 日常を描く──風俗画にみるヨーロッパ絵画の真髄』を本当に愉しもうと思ったら、絵の前に立つだけではまだ半分。後の半分は会場に足を運ぶ前に、そもそも風俗画とはなんぞやというところが大切になってきます。

 風俗画とは、人々の日常生活の情景を描いた絵画。現実の写実も描かれていますが、それを上回るほど画家個人の私的なポエムが含まれているので、今でいうところの劇画、漫画に近いところにあるといってもいいでしょう。つまり、その画家の私的なポエムを読み解くことで、画面に描かれているものとは異なる意味を見い出し、作品が持つ「もうひとつの世界」を愉しむことができるようになるのです。

 そのために必要なのは、描かれている小道具の意味を知ることです。ヨーロッパ絵画では伝統的に、シンボルとして何かを描くことが多用されています。

 例えば、犬なら「貞節」や「忠誠」。猫は「悪しき者」。鏡は「懸命」と「真実」。白百合は「純潔」の象徴として。ワインと3本の花が出てきたらそれはキリスト教的であり、割れた水瓶は「純潔の喪失」を意味しています。柔らかで温かな光で聖母マリアを表し、描かれている書物が、旧約聖書であることに気づくと、どこにでもいる一家が、いきなり「聖家族」へと変身します。

 絵の前に立ったら、小道具の持つ意味を考えながら、ほかにも何か隠されているものはないか、隅々までじっくりと見てください。見えてきたものをつなぎ合わせると、目の前の絵とはまた違うストーリーが浮かび上がってくるはずです。

※女性セブン2015年4月9・16日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

交際が報じられた赤西仁と広瀬アリス
《赤西仁と広瀬アリスの海外デートを目撃》黒木メイサと5年間暮らした「ハワイ」で過ごす2人の“本気度”
NEWSポストセブン
世界選手権東京大会を観戦される佳子さまと悠仁さま(2025年9月16日、写真/時事通信フォト)
《世界陸上観戦でもご着用》佳子さま、お気に入りの水玉ワンピースの着回し術 青ジャケットとの合わせも定番
NEWSポストセブン
秋場所
「こんなことは初めてです…」秋場所の西花道に「溜席の着物美人」が登場! 薄手の着物になった理由は厳しい暑さと本人が明かす「汗が止まりませんでした」
NEWSポストセブン
身長145cmと小柄ながら圧倒的な存在感を放つ岸みゆ
【身長145cmのグラビアスター】#ババババンビ・岸みゆ「白黒プレゼントページでデビュー」から「ファースト写真集重版」までの成功物語
NEWSポストセブン
『徹子の部屋』に月そ出演した藤井風(右・Xより)
《急接近》黒柳徹子が歌手・藤井風を招待した“行きつけ高級イタリアン”「40年交際したフランス人ピアニストとの共通点」
NEWSポストセブン
和紙で作られたイヤリングをお召しに(2025年9月14日、撮影/JMPA)
《スカートは9万9000円》佳子さま、セットアップをバラした見事な“着回しコーデ” 2日連続で2000円台の地元産イヤリングもお召しに 
NEWSポストセブン
高校時代の青木被告(集合写真)
《長野立てこもり4人殺害事件初公判》「部屋に盗聴器が仕掛けられ、いつでも悪口が聞こえてくる……」被告が語っていた事件前の“妄想”と父親の“悔恨”
NEWSポストセブン
世界的アスリートを狙った強盗事件が相次いでいる(時事通信フォト)
《イチロー氏も自宅侵入被害、弓子夫人が危機一髪》妻の真美子さんを強盗から守りたい…「自宅で撮った写真」に見える大谷翔平の“徹底的な”SNS危機管理と自宅警備体制
NEWSポストセブン
鳥取県を訪問された佳子さま(2025年9月13日、撮影/JMPA)
佳子さま、鳥取県ご訪問でピンクコーデをご披露 2000円の「七宝焼イヤリング」からうかがえる“お気持ち”
NEWSポストセブン
長崎県へ訪問された天皇ご一家(2025年9月12日、撮影/JMPA)
《長崎ご訪問》雅子さまと愛子さまの“母娘リンクコーデ” パイピングジャケットやペールブルーのセットアップに共通点もおふたりが見せた着こなしの“違い”
NEWSポストセブン
ウクライナ出身の女性イリーナ・ザルツカさん(23)がナイフで切りつけられて亡くなった(Instagramより)
《監視カメラが捉えた残忍な犯行》「刺された後、手で顔を覆い倒れた」戦火から逃れたウクライナ女性(23)米・無差別刺殺事件、トランプ大統領は「死刑以外の選択肢はない」
NEWSポストセブン
国民に笑いを届け続けた稀代のコント師・志村けんさん(共同通信)
《恋人との密会や空き巣被害も》「売物件」となった志村けんさんの3億円豪邸…高級時計や指輪、トロフィーは無造作に置かれていたのに「金庫にあった大切なモノ」
NEWSポストセブン