筆者同様、インターネットで李克強の活動報告をみた在京の中国問題専門家は「李克強氏の健康問題が今後、チャイナリスクを誘発するかもしれない」と不安げな表情で語っていた。
党指導部内でも李克強の健康問題を憂慮する声がしばしば上がり、地方視察や外遊の回数を減らすなども配慮されてきた。習近平は就任以来ほぼ2年間で欧米やアフリカ、南米やアジア諸国などすでに50か国近く訪問しているが、李克強の場合、訪問国は近隣のアジア諸国が多く、南北米大陸やオセアニア地区の国々への訪問はなく、全部で20か国にとどまっている。習近平との差は歴然としており、指導部内では李克強の健康状態を懸念する声が高まっている。
2年半後の2017年秋の第19回党大会では、7人の党政治局常務委員のなかでは年齢的に習近平と李克強以外の5人の引退が決まっているが、「李克強の健康状態によっては、常務委員として残るのは習近平1人ということもありうるかもしれない」(同書)との観測も出ている。
2017年秋から2期目を迎える習近平としては、自らの力量を存分に発揮するために、新たな常務委員に自らの腹心を登用し、少なくとも過半数はとりたいところだろう。党内で有力な勢力である中国共産主義青年団閥の台頭を抑えるためにも、その中心人物である李克強を切り捨てたいというのが本音ではなかろうか。
※SAPIO2015年5月号