平井氏が掲げている分社化や、ROE(株主資本利益率)10%以上の目標は、いずれも少ない資本で最大の利益を上げることがベースになっている。だが、一歩間違えればソニーブランド消滅の危機を招きかねない。
「いくらセンサーが儲かるからといって、部品事業にばかり経営資源を投入していると、最終製品が売れなければ他社と共倒れする危険もある。シャープが液晶事業に頼り過ぎて躓いたのと同じ構図だ。いまは利益が出なくてもウォークマンを開発したときのように独創的な商品を育てなければ未来はない」(経済誌記者)
前出の安田氏も、「ソニーは何の会社なのか、改めてビジョンを示す必要がある」と指摘したうえで、こう話す。
「平井社長は説明会で〈ソニーはお客様に刺激を与え続ける会社でありたい〉と熱を込めましたが、具体的なビジョンには全く触れませんでした。いま、短期的にV字回復できたとしても、今後も持続的な成長を目指すなら、“ソニーブランド”の革新的な新製品が次々と出てこなければ厳しいでしょう」
徹底的な効率経営で、今後のソニーはどう変わるのか。完全復活を印象づけるには、まだしばらく時間がかかりそうだ。
●撮影/横溝敦