休場が続く横綱・豊昇龍
4年ぶりに東西の番付に横綱が揃った大相撲名古屋場所だったが、東の横綱・豊昇龍が5日目から休場し、新横綱の大の里がひとり横綱として土俵に上がった。豊昇龍は新横綱として臨んだ3月の春場所以来、2回目の途中休場となった。相撲担当記者が言う。
「昇進3場所目で2度目の休場となるのは3代目・朝潮、稀勢の里(現・二所ノ関親方)に続いて3人目。しかも、平幕力士に敗れる金星配給が多い。豊昇龍は新横綱の春場所で金星を3個配給して途中休場。5月の夏場所は15日間皆勤したものの3日目と4日目に2日連続で平幕に敗れ、今場所は2日目から3日連続金星配給となった。
仮に4日間連続で金星を与えたとなれば1931年の宮城山以来、94年ぶりの不名誉な記録になるということもあってか師匠の立浪親方(元小結・旭豊)に“完全に体を治してからやり直せ”と諭されて5日目から途中休場した。新横綱3場所で8個の金星配給は、1998年の三代目・若乃花以来の多さとなった」
もちろん、横綱の金星配給の数は状況にもよる。横綱の不名誉な記録として「場所を皆勤しての負け越し」があり、15日制以降は1989年9月場所の大乃国(現・芝田山親方)と1999年9月場所の3代目若乃花の2例がある。ただ、大乃国は3横綱3大関時代で金星は1個だけだったし、3代目若乃花も4横綱3大関時代だったことで金星は2つ。
そうしたその時々の番付編成にも影響される「金星」だが、配給が多いことは横綱にとって“致命傷”になり得る。横綱を倒した平幕力士は、殊勲に対し持ち給金(褒賞金)が10円上がる。力士の基本給とは別に協会から支給される手当のことで、実際には4000倍した4万円が引退するまで本場所ごとに支払われる。金星1個(毎場所4万円)を獲得すれば、年24万円、その後10年間関取として現役を続ければ240万円の増収となる。
今場所は新横綱の大の里も4日目、中日、10日目、13日目に平幕に敗れ、皆勤したとはいえ5日目から休場した豊昇龍を上回る4個の金星を与えている。相撲ジャーナリストが言う。
「今場所、2人の横綱が与えた金星7個による対戦相手の手当の額は年額で168万円、10年で1680万円となる。それだけ支払う相撲協会の財政負担が増すわけです。それもあって、『金星配給王』と呼ばれるような前半戦の平幕力士に弱い横綱では相撲協会が休場勧告をする。あまりにもひどいと引退勧告につながる。まさに豊昇龍が該当する状況で、上位陣に強いが、平幕への取りこぼしが多いためすぐに休場させられている」