そんな有能な人材が日本で集まるのか、はなはだ疑問である。CIAは情報収集担当だけで5000人を有し、全体では3万人前後、さらに外国にいるエージェントを含めれば5万人以上になると言われている。それぐらいの規模でやらなければ、情報機関として機能しないということだ。
さらに、安倍政権が全く分かっていないのは、情報機関をつくるには莫大な予算がかかるということだ。
CIAでは、それだけの数のエージェントたちが、世界各国で多額のカネを使って、情報を集めている。情報機関において、敵方エージェントを引き抜くために使われる用語として「MICE」という言葉がある。Mはマネー(カネ)、Iはイデオロギー(思想)、Cはコンプロマイズ(強制的屈従)、Eはエゴだ。祖国を裏切らせるには、思想的に引きつける、ハニートラップなどによって服従させる、その人の自尊心を満たそうとするなどの条件が挙げられるが、何よりも大切な第一条件として挙げられるのがカネである。
CIAのカウンターインテリジェンス部門の分析官だったアルドリッチ・エイムズは、ソ連に寝返る対価として、250万ドルものカネを得たという。世界では、情報の価値とはそれだけ高いものなのである。1000兆円に及ぶ借金まみれのこの国で、そんなことが可能だろうか。
※SAPIO2015年5月号