今年の新入社員は、より「初任給の重み」を実感しているかもしれない。
民間調査機関の労務行政研究所が4月23日に速報集計した「初任給調査」によると、上場企業218社の初任給平均は、大卒で20万8722円、高卒で16万3689円となり、いずれも前年より1000円以上増えた。
注目すべきは、初任給を前年度と同額に“据え置き”した企業が58.7%となり、昨年度の75.8%より大幅に下がっている点。つまり、続々と初任給の引き上げを決める企業が増えているのだ。
「昨年から輸出産業を中心に業績が回復した企業が多く、大手を中心に労使交渉でベースアップの実施が相次いだため、それに伴って初任給の引き上げも行われている」(労務行政研究所の調査員)
この据え置き率は、リーマンショック後の2009年以降9割台の高い水準で推移していたことを考えれば、企業の「賃上げムード」は目に見える形で広がってきたといえる。
金融業やサービス業の中には2万円以上のアップの企業も珍しくないうえ、人手不足に悩む外食業界では30万円以上の初任給を提示する大手チェーンまである。
「優秀な学生を獲得したいのはもちろん、就活の後ろ倒しで短期間での採用を迫られているため、とりあえずお金で学生を釣る傾向が強まっている」(大手小売りの人事担当者)
だが、「初任給が高いからといって喜んでばかりはいられません」と話すのは、人事ジャーナリストの溝上憲文氏だ。
「いまや年齢とともに右肩上がりの賃金カーブが期待できる時代ではなく、それは新入社員も同じです。いくら初任給が高くても、その後は役割評価など成果主義の度合いが高まり、毎年給料をリセットする“洗い替え方式”をとる会社も増えました。
そんな賃金体系の会社では、たとえば初任給が30万円だとしても、30歳になっても基本給は積み上がらず、逆に下がる可能性すらあるのです」(溝上氏)