対して、『花燃ゆ』の野山獄や家屋の薄っぺらさはどうでしょう? イヤでも対比せざるをない。
良いドラマが生まれる要素は3つ。脚本、演出、役者が三位一体となって溶け合うこと。しかし、歴史ドラマの場合はもう一つ、重要な要素が加わります。空間とそれを支える大道具・小道具。
「レトロ風に、古くさくしてみました」では伝わらない。表面的に形を真似るのではなく、時にはロケ、時にはセットと工夫を凝らしつつ、素材感、感触、色あせ感、厚さ薄さまでを吟味し、モノの経年変化や時間性をしっかりとドラマ表現の中に取り込む。
それがいかに大切か。いかに時代を疑似体験する面白さにつながっていくか。
『天皇の料理番』の制作陣は、「歴史」が持っている地層、その奥深さをリスペクトしている。だからこそ、調度品一つに時代を語らせるといった手法をとることができる。
そのあたりは、ごまかそうとしてもごまかせない。視聴者にもはっきりと見えてしまう。それがテレビというメディアの怖さであり、面白さでしょう。「時代を描く」ドラマが、厚みを持った大人の娯楽になる理由でもあります。
第二ステージに突入し、テコ入れするという『花燃ゆ』。果たしてどこまで『天皇の料理番』に迫ることができるか、お手並み拝見です。