勝野は大学で東京に出てくるまで熊本で暮らしていた。それだけに、訛りを矯正するのに苦労したという。
「今でもそうなんですが、台本には全てアクセントをつけています。『もう大丈夫だ』と言われるんですが、僕は同調しやすいんで、熊本から電話がかかってきたりすると、戻ってしまう。
アクセントをつける作業に何日もかけてから覚えるんで、人より何歩も遅れます。役に入っていくのは、それからですから、台本は早く欲しいですね。
先々は悪役をやりたいです。それもハードなやつ。自分と逆ですから。やるからには、自分にないものをやってみたい。
ただ、どんな役でも自分のイメージで演じたいので、誰かを参考にすることはありません。このあいだ舞台をやった時も、ある先輩の役者が同じ役をやっていたので『そのビデオを観ておいてください』と言われたのですが、それはお断りしました。見ちゃうと、どこかで絶対にマネしちゃいますからね」
■春日太一(かすが・たいち)/1977年、東京都生まれ。主な著書に『天才 勝新太郎』『あかんやつら~東映京都撮影所血風録』(ともに文藝春秋刊)、『なぜ時代劇は滅びるのか』(新潮社刊)など。本連載をまとめた『役者は一日にしてならず』(小学館)が発売中。
※週刊ポスト2015年5月22日号