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助成金カット文楽人間国宝 橋下市長に「口だけ達者でんな」

 歌舞伎、能、文楽など伝統芸能に見いだされる“日本なるもの”をノンフィクション作家・上原善広氏が浮き彫りにする新シリーズ「日本の芸能を旅する」。今回紹介する義太夫(文楽)の人間国宝、竹本住大夫氏が橋下徹大阪市長が明言した「助成金カット」騒動について口を開いた。

 * * *
「文楽は敷居が高くて」

 助成金カット騒動のとき、橋下徹大阪市長がそう言うと、竹本住大夫は「敷居を低うしてお待ちしてます」と返した。

 しかし住大夫の引退のとき、橋下市長は「これからは後進の育成を頑張ってください」と言いながら、今年度からの助成金撤廃を決めている。

「あの方は、口だけ達者でんな」

 住大夫はガッカリした顔でそうつぶやいた。

「しかし、亡くなった歌舞伎の18代目中村勘三郎さんは、生前『河原乞食としての矜持を忘れてはならない』と話していましたが、いかがですか」

 私がそう訊くと、住大夫は「同感ですッ」と答えた。

「万が一、助成金が無くなったら、三和会の頃みたいに、巡業したらええと思てます。落ちるんやったら、若いときです。若い時にとことんまで、落ちた方がええ。そしたらどうなるか、と思うことがある」

 しかし同時に、住大夫はこうつぶやいた。

「せやけど助成金も、そら、もらえるもんは、もろうといた方がええと思います」

 住大夫のこの言葉に、大阪人としての強かさと、苦労が滲んでいる。若手に苦労はしてほしいが、かといって自分のような金銭的苦労はさせたくないという、複雑な思いがあるのだ。

※SAPIO2015年6月号

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