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諸星大二郎の「凄みとのん気さ」を堪能できる『あもくん』

【マンガ紹介】『あもくん』諸星大二郎/KADOKAWA/1296円

 怖い話は好きですか? 私は嫌いです。というか本気で怖くなりすぎてつらいのです。でも諸星大二郎作品は別! しっかり怖いのに、どこか「妙」なのです。

『あもくん』は、小学生の守くん(通称あもくん)とその父親が日常で遭遇する不思議な出来事を描いた連作短編集。 キャンプ中に散策に出た2人。疲れたというあもくんをお父さんがおぶってみんなの所に戻ると、花火をやっている。と、その中に、あもくんの姿が。〈僕が おぶっているの 誰?〉。はい、以上。以上なのです。そして次の短編では、父子は別の出来事に遭遇するのです。

 ドアを閉める瞬間人影が見えたり、部屋の壁に手形がついていたり、塀の上から得体の知れないものに名前を呼ばれたり…。ちょっと待って、その後どうなったの!? と叫びたくなりますが、そんなことお構いなしに、毎度不思議はその場にふわっと残されたまま。あもくんたちもそれなりに怖がってはいるんですが、 なんだかのん気なんですよね…。

 今作には「ベッドサイドストーリー」として著者が自身の幼い子供に語って聞かせたという短編小説も収録。学校の下に男の子が埋まったままだったり、やっぱり「え! その後は!?」と叫びたくなる終わり方。子供の時にこれ聞かされたら眠れなくなっちゃうよなあ…と同情するやらうらやましいやら。諸星大二郎という作家の、凄みとのん気さの同居する妙な味わいを堪能できる一冊です。

(文/門倉紫麻)

※女性セブン2015年6月4日号

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