ライフ

がん細胞だけピンポイントで狙う体幹部定位放射線治療の成果

 従来の放射線治療は、がん細胞の周囲にある正常細胞を傷つけないように、低い線量を何回にも分けて照射するため、長期の治療期間が必要だった。体幹部定位(たいかんぶていい)放射線治療(SBRT)は、がん細胞だけをピンポイントで狙うことで、周囲の正常細胞へのダメージを極力減らすために開発された技術だ。

 1960年代に頭部病変に対して、開発されたガンマナイフが最初で、その後にIT技術や、照射技術の進歩により発展し、体幹病変に対してはSBRTが応用されるようになった。日本では、1998年に肺がんへの治療成績が報告されている。東京放射線クリニックの柏原賢一院長に話を聞いた。

「従来の放射線治療は、1日2Gy(グレイ)を30~35回、総量60~70Gy照射するので、治療期間は1か月半~2か月ほどかかりました。それに対し、SBRTは保険診療ですと1日あたり、10~12Gyを外来で4~5回照射、約1週間で完了です。1期の非小細胞がんの治療後、2年生存率が75%という報告もあり、有効な治療効果をあげています」

 1回の照射時間は数分で、治療は約30分で終了する。がんの位置や大きさによっては、呼吸を止めてもらう必要があり、その場合は1時間程度かかることもある。

「保険適用は、5センチ以内、3個までですが、現在は9センチという大きながんに対しても、自費診療でSBRTを行なっています。治療1か月後から、がんが小さくなり、1年10か月を経過しても再発なく、元気に暮らしている患者さんもいらっしゃいます。また、原発性だけでなく、転移したがんでも効果をあげています」(柏原院長)

 副作用は、放射線肺炎の可能性がある。治療終了後3~6か月経過した頃、放射線を照射した部位の一部に、肺炎がみられることもある。症状が出ることはなく、数か月で治る。外来でも実施できるSBRTは、短期間で治療するので、他の病気を併発して手術ができない患者や、低肺機能患者や高齢者でも治療が可能だ。低侵襲(ていしんしゅう)の放射線治療として、注目されている。

■取材・構成/岩城レイ子

※週刊ポスト2015年6月26日号

トピックス

野生のヒグマの恐怖を対峙したハンターが語った(左の写真はサンプルです)
「奴らは6発撃っても死なない」「猟犬もビクビクと震え上がった」クレームを入れる人が知らない“北海道のヒグマの恐ろしさ”《対峙したハンターが語る熊恐怖体験》
NEWSポストセブン
8月20日・神戸市のマンションで女性が刺殺される事件が発生した(右/時事通信フォト)
《神戸市・24歳女性刺殺》「エレベーターの前に血溜まり、女性の靴が片方だけ…」オートロックを突破し数分で逃走、片山恵さん(24)を襲った悲劇の“緊迫の一部始終”
NEWSポストセブン
大谷が購入したハワイの別荘に関する訴訟があった(共同通信)
「オオタニは代理人を盾に…」黒塗りの訴状に記された“大谷翔平ビジネスのリアル”…ハワイ25億円別荘の訴訟騒動、前々からあった“不吉な予兆”
NEWSポストセブン
話題を集めた佳子さま着用の水玉ワンピース(写真/共同通信社)
《夏らしくてとても爽やかとSNSで絶賛》佳子さま“何年も同じ水玉ワンピースを着回し”で体現する「皇室の伝統的な精神」
週刊ポスト
ヒグマの親子のイメージ(時事通信)
《駆除個体は名物熊“岩尾別の母さん”》地元で評判の「大人しいクマ」が人を襲ったワケ「現場は“アリの巣が沢山出来る”ヒヤリハット地点だった」【羅臼岳ヒグマ死亡事故】
NEWSポストセブン
決勝の相手は智弁和歌山。奇しくも当時のキャプテンは中谷仁で、現在、母校の監督をしている点でも両者は共通する
1997年夏の甲子園で820球を投げた平安・川口知哉 プロ入り後の不調について「あの夏の代償はまったくなかった。自分に実力がなかっただけ」
週刊ポスト
真美子さんが信頼を寄せる大谷翔平の代理人・ネズ・バレロ氏(時事通信)
《“訴訟でモヤモヤ”の真美子さん》スゴ腕代理人・バレロ氏に寄せる“全幅の信頼”「スイートルームにも家族で同伴」【大谷翔平のハワイ別荘訴訟騒動】
NEWSポストセブン
中居正広氏の騒動はどこに帰着するのか
《中居正広氏のトラブル事案はなぜ刑事事件にならないのか》示談内容に「刑事告訴しない」条項が盛り込まれている可能性も 示談破棄なら状況変化も
週刊ポスト
離婚を発表した加藤ローサと松井大輔(右/Instagramより)
「ママがやってよ」が嫌いな言葉…加藤ローサ(40)、夫・松井大輔氏(44)に尽くし続けた背景に母が伝えていた“人生失敗の3大要素”
NEWSポストセブン
ヒグマの親子のイメージ(時事通信)
【観光客が熊に餌を…】羅臼岳クマ事故でべテランハンターが指摘する“過酷すぎる駆除活動”「日当8000円、労災もなし、人のためでも限界」
NEWSポストセブン
2013年に結婚した北島康介と音楽ユニット「girl next door」の千紗
《金メダリスト・北島康介に不倫報道》「店内でも暗黙のウワサに…」 “小芝風花似”ホステスと逢瀬を重ねた“銀座の高級老舗クラブ”の正体「超一流が集まるお堅い店」
NEWSポストセブン
夏レジャーを普通に楽しんでほしいのが地域住民の願い(イメージ)
《各地の海辺が”行為”のための出会いの場に》近隣住民「男性同士で雑木林を分け行って…」 「本当に困ってんの、こっちは」ドローンで盗撮しようとする悪趣味な人たちも出現
NEWSポストセブン